第19話 猫彼氏と鈴の秘密
唯と哲也、そして鈴に込められた想い——。哲也が猫に戻るかもしれないという運命を前に、二人の絆が試されるときが訪れます。不安と希望の中、唯が選ぶのは強い意志で彼を支える道。この物語で描かれるのは、日常に潜む魔法と愛の物語。どうぞお楽しみください!
唯と哲也がオムライスを平らげた後、唯はそっと空の皿を片付けながら、胸にくすぶる不安を振り払うように首を振った。
「ねえ、哲也くん」
唯が振り返り、彼を真剣な目で見つめた。
「ん?どうした?」
哲也はのんびりと椅子に座り直しながら答える。
「もし哲也くんが猫に戻ったら、私、どうやって連絡を取ればいいの?」
唐突な質問に、哲也は目を丸くした後、口元に軽く笑みを浮かべた。
「おいおい、そんなことを今から心配してるのかよ」
「だって、私は哲也くんを見つけられなくなるかもしれないでしょ!」
唯の勢いに圧倒されながら、哲也は冗談めかした調子で肩をすくめる。
「そのときは、公園で『哲也』って叫んでくれれば、俺がどこからでも駆けつけるよ」
「そんなアニメみたいな展開、うまくいくわけないじゃない!」
唯が思わず声を上げると、哲也は笑いながら立ち上がり、彼女の頭をぽんと軽く叩いた。
「冗談だってば。でも、本当に猫に戻ったら……そうだな、俺がもっと分かりやすい目印を残しておくか」
「目印?」
唯は不思議そうに首をかしげる。哲也はしばし考えた後、突然手を打った。
「唯ちゃん!鈴だ!(俺ってば名案!)」
「えっ?」
唯の顔が一瞬で赤く染まる。
「す、鈴って、それ……ちょっと恥ずかしくない?」
彼女の反応に、哲也はいたずらっぽく笑いながら言葉を続けた。
「いやいや、ちゃんとしたおしゃれなやつだよ。例えば、唯ちゃんが選んでくれた鈴なら、俺も猫になったときに喜んで着けるよ」
唯は照れながらも、ふと想像してしまう。哲也が猫の姿で、唯が選んだ可愛い鈴付きの首輪を着けているところを。
「……それ、絶対似合わない気がする」
唯がくすっと笑うと、哲也も釣られて笑った。
「まあ、首輪は冗談としても、鈴なら意味があるだろ? 俺が猫になったら、鈴の音で唯ちゃんを安心させられるかもしれないし」
唯は小さくうなずき、目を輝かせながら提案した。
「……じゃあ、私もお揃いで付けようかな」
哲也は目を見開いて驚いた。
「唯ちゃんも? そんなの、唯ちゃんのほうが恥ずかしくないか?」
「……私も鈴の音で哲也くんを安心させられるかもしれないでしょ?」
唯は軽く笑って言った。
♦♦♦
数日後、唯と哲也はショッピングモールのペットショップで鈴を探していた。
「唯ちゃん、ここはどうだ?猫用のコーナー、結構種類があるぞ」
哲也が指さした店には、さまざまなデザインの首輪と鈴が並んでいた。
「ちょっと待って。哲也くんが猫に戻るのを想定してるみたいで、なんか変な気分」
「そうか?俺的には案外しっくり来ると思うけど」
唯が小さな鈴を手に取ったそのとき、不思議なことが起きた。鈴と唯のペンダントが共鳴するように微かに光り始めたのだ。
「これ、何?」
唯が驚いて哲也を見ると、彼もペンダントと鈴を見比べて眉をひそめる。
「ただの偶然じゃないだろうな……」
哲也が呟いた瞬間、背後から冷ややかな声が響いた。
「偶然じゃないわよ」
振り返ると、そこにはアリサが立っていた。冷たい微笑を浮かべながら、ペンダントと鈴を交互に見つめている。
「アリサさん……どうしてここに?」
唯が警戒しながら尋ねると、アリサは肩をすくめた。
「ペンダントと鈴――それらが共鳴する力を持っているから。哲也が猫に戻らずにいられる可能性を引き出す道具なの」
「どういうことですか?」
唯が問うと、アリサは静かに言葉を続けた。
「鈴は唯さん、あなたの思いを増幅させる媒介になる。あなたがどれだけ哲也と一緒にいたいか、その意志が強ければ強いほど、彼の人間としての時間が延びる可能性があるのよ」
唯は鈴を握りしめ、哲也を守れるのならと決意を固めたが、アリサの言葉の最後にふと疑問を抱く。
「でも……リスクって?」
アリサは目を細めて答える。
「唯さんが弱気になれば、鈴とペンダントの力は暴走するかもしれない。そのとき、哲也がどうなるかは――私にも分からないわ」
唯はその言葉を聞いて息を呑む。
「唯ちゃん、大丈夫だよ」
哲也が優しく肩に手を置きながら、彼女を安心させるように微笑む。
唯は目を閉じ、深く息を吸った後、しっかりと哲也を見つめた。
「私、絶対に弱気にならない。哲也くんを守るためなら、どんなことだって乗り越える」
その言葉に哲也も力強くうなずき、二人は新たな一歩を踏み出した。
今回も読んでくださりありがとうございます!唯と哲也の間に鈴が象徴するもの、それはただのアクセサリーではなく、二人の絆そのものです。アリサの言葉が何を暗示しているのか、哲也が背負う運命がどう展開していくのか、今後も目が離せません!次回もぜひ読みに来てくださいね。




