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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第1章 猫と少女の奇妙な日常
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第15話 猫耳の秘密と揺れる想い

「彼女の涙を止めたい。ただそれだけのために、僕は猫になった。でも、その嘘が彼女を傷つけることになるなんて――」

 青白いペンダントを握りしめた唯は、揺れる瞳で俺を見つめていた。その横顔には、信じたいけど信じきれない葛藤が浮かんでいるように見える。俺が猫だと知った唯は、まだその事実を完全に受け入れられないでいる。


「哲也くん、本当に猫だったの……?」


「……ごめん、唯ちゃん。ずっと隠してた。でも、どうしても君のそばにいたかったんだ」


 俺はその場に跪き、唯に向き直る。唯は小さく震えた声で、少しずつ口を開いた。


「私……どうすればいいのかわからないよ。哲也くんは、ずっと人間だと思ってた。私と同じ高校生だって思ってた。でも……猫だなんて……」


 唯の声は次第に小さくなり、彼女の手にあるペンダントが青白く輝き始めた。ペンダントの光は、唯の心を映し出すように強く揺らめき、俺はその光に目を細めた。


「俺は君を騙すつもりなんてなかった。ただ、君のことが好きだったんだ。だから、君に近づけるなら人間になれるって言われて、あの薬を……」


 そこまで言いかけたときだった。店の窓の外に見覚えのある姿が通り過ぎた。新名浩平だ。


「唯ちゃん、大丈夫? さっきから外から様子見てたけど、何かあったの?」


 浩平が店内に入ってくると、唯は驚いたように顔を上げた。


「浩平くん……!」


 浩平の視線が俺と唯を交互に行き来し、次に俺の頭――そこに浮かんだ猫耳に止まる。少し間を置いて、浩平は小さく息を吐いた。


「これって……猫耳? え、何これ、どういう状況?」


 俺は慌てて頭を隠すが、既に遅い。浩平の表情には驚きと混乱が浮かんでいたが、意外にもすぐに冷静さを取り戻した。


「唯ちゃん、何が起きてるのか説明してくれる? 俺に何かできることがあるなら言ってよ」


 浩平の真剣な目が唯を見つめ、唯は少し迷いながらも頷いた。


「実は……哲也くんが、猫だったの」


 その一言で、浩平は再び目を丸くするが、すぐに俺に視線を向けた。そして、一歩近づいて低い声で問いかける。


「哲也、お前、本当に唯ちゃんを騙すつもりはなかったのか?」


「もちろんだ!」


 即答した俺に、浩平は少しだけ笑みを浮かべた。


「なら、ちゃんと唯ちゃんの気持ちを考えてやれよ。俺は、唯ちゃんを泣かせるやつは絶対許さないからな」


 その言葉には、どこか俺を信じてくれるような響きがあった。俺は小さく頷き、唯に再び向き直った。


「唯ちゃん、俺は……(君のことが……!)」


 そのときだった。ペンダントが突然眩しい光を放ち、店内に青い結界のようなものが広がった。周囲の景色が歪み、見覚えのある人物が現れる。


「やっぱり来たのね、哲也。それに唯さんも。面白いことになりそうだわ」


 黒いローブをまとったアリサが、不敵な笑みを浮かべて立っていた。俺はすぐに立ち上がり、唯を守るように彼女の前に立つ。


「アリサ! 一体何のつもりだ?」


 アリサは俺の問いを軽くあしらい、指先でペンダントを指し示す。


「唯さん、そのペンダントが持つ力、もう少し試してみたくない? それを使えば、彼の”本当の姿”をもっと知ることができるわよ」


 唯はペンダントを見つめ、手が小さく震えていた。俺は必死に彼女に呼びかける。


「唯ちゃん、そんなのに惑わされないで! 俺は……」


「哲也くん、黙ってて!」


 唯の強い声に、俺は言葉を詰まらせた。彼女の瞳には、迷いと怒り、そして悲しみが混ざり合っていた。


「私は……もっと知りたい。哲也くんのこと、全部知りたいの!」


 唯がペンダントを強く握りしめると、それが再び強い光を放った。その光の中で、俺の身体が徐々に変化していく。毛が生え、手が小さな前足に変わり、気づけば俺は完全に猫の姿になっていた。


「にゃー……!(唯ちゃん、これは……)」


 俺は猫の姿で必死に訴えるが、唯には伝わらない。彼女の目には涙が浮かび、アリサが満足そうに笑みを浮かべる。


「ほら、見たこと? 彼の本当の姿よ」


 その言葉に、唯は小さく震えながらも、猫になった俺を抱き上げた。その手の温もりが伝わる。


「哲也くん……これが本当のあなたなのね。でも……私は、まだ信じたい。あなたが私に嘘をついても、それでも私のことを思ってくれてるって……」


 唯の涙が俺の毛に落ち、俺は小さく鳴き声をあげた。そのとき、浩平がアリサの前に立ちはだかった。


「アリサさんだっけ? 俺たちの前から消えてくれ。これ以上、唯ちゃんを苦しめないでくれ」


 浩平の真っ直ぐな言葉に、アリサは少し驚いた表情を見せたが、すぐに冷たい笑みを浮かべた。


「いいわ。今日はここまでにしておいてあげる。でも、哲也、覚えておきなさい。このままじゃ、いずれ彼女はあなたの秘密に押しつぶされるわよ」


 アリサはそう言い残し、青い光とともに消え去った。結界が解け、店内の静けさが戻る。


 唯は猫の姿の俺を抱きしめながら、そっと微笑んだ。


「哲也くん、大丈夫だよ。私はあなたを信じる。猫だろうと、何だろうと、私の大切な人だから」


 その言葉に、俺は思わず涙を浮かべそうになった。唯の温かい心に触れた瞬間、俺は彼女への想いをさらに強くした。


 しかし、アリサが残した言葉は、俺たちの未来に暗い影を落としていた。俺が完全に人間の姿を保つためには、まだ越えなければならない試練が待ち受けている。それでも、俺は決意した。唯を守り抜き、彼女の隣に立つために――。

「猫として生きること、愛する彼女のそばにいること――それが哲也の願い。しかし、アリサが仕掛ける新たな罠とは?」


ここまで読んで下さりありがとうございます。

アリサが哲也に仕掛ける罠とは何か?次作をご期待ください。

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