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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第1章 猫と少女の奇妙な日常
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第11話 約束の儀式と涙の再会

唯への想いを抱え、人間と猫の狭間で揺れる哲也。そんな彼が辿り着いたのは、愛する人に再び会いたいと願う一人の老人の家だった。

それぞれの願いが交錯する、魔法の夜が始まる――。

 夜の露店で、俺はおじいさんとの約束を胸に抱き、再び人間の姿に戻った。しかし、胸の奥には未だに多くの疑問が残っていた。なぜ自分は再び猫に戻ってしまったのか?そして、この魔法の真実とは何なのか?


 俺は、おじいさんの家へ向かいながら、青山さんに尋ねた。


「青山さん、俺は何度も人間に戻ってきたけど、そのたびに猫に戻ることがある。これってどういうことなんだ?」


 青山さんは少し考え込み、静かに答えた。


「それは恐らく、お前がまだ”完全に人間になりきれていない”からだろう。お前の魂は、まだ猫と人間の間で揺れ動いている状態なんだ」


 俺はその言葉に衝撃を受けた。


「唯ちゃんのために人間になりたいと強く願ったのに、まだ猫の部分が残っているのか?」


「うん。魔法の力ってのは願いを叶えるだけじゃなく、魂の深い部分に影響を与えるものなんだ。特に、魂の本質が動物の形を取っている場合、願いが叶った後もその本質が変わらない限り、元の姿に引き戻されることがある」


「本質……か。俺はまだ猫の心を持っているってことか?」


 青山さんは頷きながらも、俺の肩に手を置いた。


「でも、君が唯ちゃんに会いたいという強い願いは、人間としての姿を保つ力にもなる。だから、完全に猫に戻るわけじゃなく、行き来する状態になっているんだろう」


 俺は青山さんの言葉に複雑な気持ちを抱えつつ、おじいさんの家に到着した。そこで、さらに魔法の背景について尋ねた。


「ジジイ、この魔法の薬ってどうやって作られたんだ?そんなものがあるなんて、普通じゃ考えられない」


 おじいさんは静かに椅子に座り、煙草を一服しながら話し始めた。


「この薬は、ワシの妻が亡くなる前に作ってくれたものなんじゃよ。妻は偉大な魔法使いで、人間と動物の魂を繋ぐ力を持っていた。ワシも妻と出会ったことで、少しばかりその力を学んだんじゃ」


「じゃあ、あの薬は……ジジイの奥さんが残したものだったのか?」


「そうじゃ。妻が亡くなる前に、”魂が迷ったときにこれを使え”と言って、ワシに託してくれたんじゃ」


 俺はその話を聞いて、少しずつ理解が深まっていった。しかし、まだ儀式が終わっていない。ちょうどそのとき、玄関の外から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「哲也くん、いるの?」


 声の主は唯だった。驚いて振り向くと、唯が一人で玄関に立っていた。目には涙が浮かんでいる。


「唯ちゃん……どうしてここに?」


 唯が涙をこらえながら話し始めた。


「哲也くん、突然いなくなって心配で……探してたの。どこにもいないから、ずっと不安でたまらなかったんだ」


 俺は唯の言葉に胸が締め付けられるような気持ちになったが、自分が猫であること、そしてこの魔法の真実についてはまだ話すことができなかった。


「ごめん、唯ちゃん。俺もいろいろあって、少し遠回りしてしまった。でももう大丈夫。君のそばに戻ってきたよ」


 唯は涙を拭いながら俺の手を取った。


「もうどこにも行かないで。私は哲也くんとずっと一緒にいたいの」


 その瞬間、おじいさんが静かに儀式の準備を始めた。俺はその様子を見て、唯に優しく言った。


「唯ちゃん、少しだけ待っていてくれるかな?このおじいさんのお願いを聞いてから、一緒に帰ろう」


 唯は戸惑いながらも頷き、少し離れた場所で見守ることにした。俺はおじいさんの方へと歩み寄り、彼に問いかけた。


「ジジイ、この儀式で本当に人間としての姿を保てるんだな?」


「そうじゃ。この薬と儀式は、魂の迷いを晴らし、お前に人間の姿を保たせる力がある。ただし、ワシも自分の願いを込めるつもりじゃ。これが最後の儀式じゃからな」


 おじいさんは奥さんの写真を胸に抱き、祈りを込めて儀式を始めた。魔法の光が部屋全体を包み込み、俺たちはその眩しさに一瞬目を細めた。俺は心の中で強く願った。


「(俺は人間として、唯ちゃんのそばにいたい。猫の自分を捨ててでも……)」


 光が次第に強くなり、俺の身体が暖かい感覚に包まれた。その時、不思議なことが起きた。おじいさんの目の前に淡い光が現れ、その中にかつての奥さんの姿が浮かび上がったのだ。


 おじいさんは涙を浮かべ、そっと手を伸ばした。


「妻よ……長い間、会いたかった。これでようやく、別れを告げられる」


 奥さんは微笑みながら、静かにおじいさんに頷いた。そして、そっと囁くように言った。


「ありがとう。あなたの愛が私をここに呼んでくれたのね。今度こそ、さようなら」


 光がふわりと揺れ、奥さんの姿は静かに消えていった。おじいさんはその場に泣き崩れたが、どこか晴れやかな表情をしていた。


「ありがとう、哲也。そして、唯お嬢さん。お前たちのおかげで、ワシはようやく心の整理がついたわ」


 儀式が終わり、俺の身体は完全に人間の姿を保つことができるようになった。ただし、心が揺らいだ時には再び猫に戻る可能性があることは、おじいさんの言葉から理解していた。だが、今は唯に真実を話すタイミングではないと思った。


「唯ちゃん、お待たせ。これから一緒に帰ろう」


 唯は俺の手を握り返し、満面の笑みを浮かべた。


「うん、帰ろう、哲也くん」


 俺たちは手を繋いで、静かな夜道を歩き始めた。唯に真実を話す日はいつか来るかもしれない。でも今は、彼女のそばにいることが何よりも大切だった。

この物語は、一つの儀式で心が交わる瞬間を描きました。哲也が唯のそばにいたいと強く願った夜、おじいさんもまた愛する人に別れを告げることができました。

魔法のような一夜が、これからの二人にどんな影響を与えるのか――続きが気になる読者の皆様に、少しだけ未来を想像していただけたら嬉しいです。

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