アメリカ大統領選挙はバイデン大統領撤退で「第二部」へ!
筆者:
本日は当エッセイを選んでいただきありがとうございます。
今回は、「バイデン氏が撤退」した後の民主党についてと
トランプ氏の状況についてもついでに個人的な解説をしていこうと思います。
◇バイデン大統領が撤退する2大背景
質問者:
バイデン大統領は6月27日の大統領候補討論会で認知能力に問題があるのでは? と言われていましたが、まさかこのタイミングで撤退を表明するとは……。
筆者:
再選を目指す資格のある民主党の大統領が選挙戦途中に出馬辞退した例は1968年にさかのぼるそうです。
当時は民主党予備選で劣勢だったリンドン・ジョンソン氏が撤退を表明し、その年の党大会ではヒューバート・ハンフリー副大統領が党の正式候補に選ばれました。
しかし今回は1968年と違う点があります。
バイデン氏は民主党党員獲得票4600人のうち各州などの民主党予備選で3896人が「バイデン氏に投票を誓約」することに成功しておりまして、
8月上旬の民主党の党大会でも指名されることは間違いありませんでした。
質問者:
それならどうして撤退することになったんでしょうか?
以前の筆者さんの分析では「オバマ第4期目政権」のために「傀儡にしやすい」からバイデン大統領継続と言う見方だったようですが……。
筆者:
討論会以降に一番大きな影響があったこととしては、
数十億円単位でバイデン氏に寄付していた方々が「バイデン氏のままだと駄目だ」と続々と寄付を撤回していくという「脅し」があった状況が一番大きかったようです。
何だかんだで大統領選挙はお金をいかに投入するかが勝敗を大きく分けます。
アメリカ大統領選挙ではテレビCMなどを全面的に使う事が可能なので、
そこにどれだけお金を投入したかで無党派層が影響を受けるという事です。
2点目はあまり世間で言われていませんが上下両院の選挙もアメリカ大統領選挙と同日に行われます。
各種世論調査で劣勢な議員たちが「バイデン降ろし」を開始し始め、30人以上が公的な場で明確に意思表示するほどでした。
仮に大統領として再選できたとしても上下両院を同時に落とすとなると政権運営に深刻なダメージを受けるために「院政」を敷いているオバマ氏としても許されない状況になったという事でしょう。
質問者:
なるほど、だからオバマ元大統領もバイデン氏は撤退するべきだとか言い始めていたんですね……。
筆者:
バイデン氏そのものの状況は変わっていないんですけど、あの討論会によって「周りの見方」が変わってしまったという事のようですね。
◇ハリス氏は順調に大統領候補に選ばれる模様
質問者:
バイデン大統領はカマラ・ハリス副大統領を後継指名されたようですけど、
ハリス副大統領はこのまま民主党大統領候補になれるのでしょうか?
筆者:
「バイデン氏に投票を誓約」した3800人の代議員はこれから誰にも縛られないことになるので“振り出し“状態になるようです。
そして、1回目の投票で過半数の支持を得る候補がいなければ、投票が繰り返されるという事になるようです。
ロイター通信は7月21日の報道で全米50州の全ての民主党委員長がハリス氏を党の大統領候補として支持する意向を固めているために、ハリス氏が大統領候補選ばれることは間違いないと思います。
質問者:
テイラー・スウィフトさんやオバマ元大統領夫人なども可能性があるとの報道があったんですけど、それについてはどうなんでしょうか?
筆者:
可能性はゼロでは無いとは思いますけど、ミシェル・オバマ氏は不出馬を前々から言っています。
テイラー・スウィフト氏も民主党を支援した過去があり、出馬するのであれば若者を中心に投票が伸びることは間違いないですが、もちろん政治手腕は疑問が残ると思うので厳しいと思いますね。
全米50州の全ての民主党委員長がハリス氏を党の大統領候補として支持と言うのはかなり大きいですからね。
というのも、これまで「バイデン氏」という事で集められた選挙資金の寄付を活用することが出来るのはバイデン氏と連名で副大統領で連なっていたハリス氏のみだからです。
やはり資金面は先ほどもお伝えした通り大統領選挙の行方を大きく左右します。
ですから、民主党50州が即座にハリス氏を支持したという事なのです。
ミシェル・オバマ氏やテイラー氏は今から寄付を集めるのは困難ですので、
かなり自分の持ち出しになってしまいます。
勝算が100に近いと確信できないと出馬できないでしょう。
ハリス氏VSトランプ氏と言う構図は99.99%以上の確率で確定でしょうね。
◇ハリス氏VSトランプ氏の状況
質問者:
そういうことですと、ハリスさんでトランプさんに対抗できるんでしょうか?
筆者:
これまでバイデン大統領に高齢・認知不安があった際に「誰が一番トランプ氏と戦えるか?」と言ったアンケートが実施されていたのですが、
意外にもバイデン氏を上回る有力候補者がいなかったようなんですね。
というのも、ハリス氏以外は全米での知名度が低く、
ハリス氏はあまり副大統領として手腕を発揮しておらず人気が無いのです。
質問者:
え!? あれだけヨタヨタされていたバイデン大統領より下ってどういう事なんですか……。
筆者:
ハリス氏に関しては21年6月から支持率はバイデン氏より下回っています。
ハリス氏はバイデン政権で移民政策の陣頭指揮を執っているのですが、
移民政策を支持する人は30%台なんです。
しかも、移民問題はハリス氏の看板政策・主要担当任務の一つでもあるので、支持率へのダメージがひときわ大きいとされています。
なんとカルフォルニア州などでは950ドル以下の窃盗は「軽犯罪」となり逮捕されないという州法案が出来るほど治安が悪化していますからね。
それだけ移民政策への批判は大きいという事です。
またハリス氏は上院議員時代の19年、ハリスの事務所スタッフの離職率は、アメリカの上院議員100人の中で最も高かったことから、「パワハラがあったのでは?」と言う疑惑もあるようです。
質問者:
それでは人気が出るはずが無いですね……。
筆者:
ただ、勝算がゼロと言うことは無いと思います。
トランプ氏に最近話題が集中している状況を引き戻すことには成功しましたし、
59歳(選挙時60歳)と高齢不安と言うことだけはありません。
また、検事出身という事もありトランプ氏の司法問題に対する追及することや、
初の女性大統領を目指すという“話題性”を前面に出す選挙戦略は一定の評価には繋がると思います。
※ちなみに現在トランプ氏が係争中の案件については大統領選挙には影響が出にくい採決や過程になっているようです。
質問者:
それでも何だか政治面で弱いと厳しい気がしますけどね……。
◇それでもトランプ氏が圧倒的有利
質問者:
ハリスさんはトランプさんに対抗できるんでしょうか?
筆者:
正直言って難しいとは思います。
7月13日にトランプ氏側は狙撃されてもなお一命をとりとめたことにより人気が沸騰している状況ですからね。
反不法移民政策を前の在任中に取っていたトランプ氏ですから、真っ向からハリス氏を批判できる立場にあることも大きいでしょう。
ちなみにレーガン大統領(当時)が暗殺未遂事件から生還して立候補した1984年のアメリカ大統領選挙では50州中なんと49州で勝利を挙げて再選するなど歴史的大勝になっています(民主党勝利はミネソタ州、州とカウントされていないワシントンD.Cのみ)。
質問者:
えっ……もうほとんど全部じゃないですか……。
筆者:
まぁ、トランプ氏のことが嫌いな民主党支持層などが投票するとは思えないので1984年の大統領選挙より獲得できるとは思えませんが、
それでも圧倒的有利な地位を築いたのは間違いない事件だったと言えます。
また、副大統領候補になったバンス氏は39歳(大統領選挙時は40歳)と非常に若いことから高齢批判を交わす作戦としても一役買っています。
バンス氏は「ラストベルト」についての著書で有名になり上院議員を務めている人物。全体についてトランプ氏が、主要支持層である白人についてはバンス氏が語るという役割分担を担当することになりそうです。
質問者:
あの世界トップクラスの大富豪であるイーロン・マスクさんもトランプさんを支持しているという事みたいですね。
筆者:
イーロン・マスク氏はなんと大統領選挙までの間、毎月4500万ドル(70億円前後)献金するそうなので――あと5カ月あるので350億円です。
それだけ寄付してもペイできる自信があるという事なんでしょうね。
後は以前お伝えした通り、民主党系と人脈が非常に厚いロバート・F・ケネディ・ジュニア氏も出馬するので民主党票が割れる可能性があります。
オバマ第3期目政権側が4期目にするのも厳しい状況と言えますが、
民主党の狙いはハリス氏が大統領当選というより上院下院選挙の方が大きいでしょうね。
バイデン氏がトップの状況では総崩れになってしまう可能性があるので上下両院を考えるとハリス氏の方が良いという判断だと思います。上院は50対50と拮抗している状況ですので何としても過半数を取らないといけないわけです。(同数の場合は副大統領が裁定を決めるため)
◇“暗殺”の可能性はまだ残るため情勢変化も
質問者:
逆にトランプさんが負ける可能性ってあるんですか?
筆者:
このままでは負ける可能性は低いのですが、やはり暗殺のリスクだと思います。
どちらにも投票したくない不満を持つ人がいますからね。
トランプ氏暗殺未遂の犯人もトランプ氏とバイデン氏両方狙っていた可能性があったことが分かっています。
再びトランプ氏が狙われる可能性は否定できないと思いますし、
ハリス氏が狙われて一命を取り留めてからの大逆転と言う可能性もあると思います。
というのも、選挙で覆せないと思った際に“最終手段”を取ることで全てを破壊しつくしてやろうという発想の人間が出るという事です。
日本でも安倍元首相が狙撃死され、岸田首相が襲撃された事件がありましたからね。
このように恐ろしいことが少なくとも可能性の一つとして“日常化”されつつあると言って良いでしょう。
質問者:
でもそんなことをしたら秩序は崩壊しますよね……。
筆者:
血で血を洗うことになりますし、政党そのものは残るので「第二、第三のトランプ氏」が出てくるだけだと思います。
構造の本質は変わらない上に無秩序になるために、
テロや暗殺や革命は何があっても許されるものではありません。
不満があるなら国民側が声を上げていき、選挙は勿論のことそれ以外でも政府側を変えていくという発想が大事だと思います。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回はバイデン大統領撤退の理由についてと、ハリス副大統領の勝算、
トランプ大統領が“敗れる”可能性について個人的な考察をしてみました。
いつも皆さんがご覧いただいていることで励みになっています。
今後もこのような時事問題、政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。