意味なんて無いと分かっていても。
処女作です。温かく見守って頂ければ幸いです。
誤字、脱字等があればご教示願います。
別にこの行為に意味なんて無いのだ。最初から。
無いのを分かりながらも追い続けてしまう私は世間一般で言う馬鹿な部類に入るのだろうか。
でも恋ってそういうもんでしょ?
……馬鹿だなって意味なんて無いって分かっていても…何度でも恋に落ちるのだ、たった一人に。
叶わない恋だって分かってる。
貴方は私を見てないって分かってる。
わかってるんだよ、そんなこと。
だって貴方が好きなのは私の姉だもの。
私に愛を呟いてその先に見てるのは私の姉なの。
でもこれが私の贖罪だから。
姉を殺した私の……
―――――
出会った瞬間なんて覚えていない。
物心着く前から貴方は私と私の姉と一緒にいたから。俗に言う幼馴染みでしょうね。
私と6歳離れた姉と貴方。
2人ともとても可愛がってくれたけれど、特別な感情はくれなかった。
貴方の愛は全て姉に注がれていたもの。
昔からずっと。
いつだろう、気付いたのは。
そんなこと思い出せない。
もう遠い記憶よね。
姉が死んだのは私が10歳の時だったかしら。
姉は16歳という若さで死んだの。
私の代わりに。
あの事故で死ぬのは私だったはずなのに。
私を守って死んだの、優秀な姉が。
優秀な姉と不出来な妹。
ねぇ姉が死んでなんて言われたと思う?
『なんでお前が死ななかったんだ』って言われたの
両親に。
両親は最初から私なんて見ていなくて愛してなくて常に姉を見ていた、優秀な姉を。
愛情なんて貰ったことはない。
唯一くれたのが姉と貴方だった。
でも私知ってるのよ?
本当は姉が私のことを蔑んでいたことを。
ねぇ気付いてないと思った?笑
だから私は死なないために姉を突き飛ばしたわ。
私の身代わりとして。
その代償かしら?
姉の名前を呼ばれながら大好きな貴方に抱かれるのは。
でもそれでいいわ。
だって私の居場所はここしかないもの。
姉なんていらない。
ねぇ私感謝しているの。
私の代わりに死んでくれたこと。
心の底から感謝しているのよ?笑
やっと望み通りの結末になったもの。
これ以上は求めないから安心して?
ねぇこれで何度目の人生だと思う?笑
もう何度過去に戻ったかなんて忘れてしまったわ。
だって妹が悪いのよ?
私を殺すから。
食われる前に食わなければ私、不幸になってしまうもの。
―――――
1度目の人生で貴方と結ばれるのは私だった。
貴方に告白されて付き合い始めた時だった。
妹に殺された。
2度目の人生は1度目の人生を踏まえて貴方と結ばれた後、すぐに貴方と逃げたわ。
でもまた妹に殺された。
3度目の人生では社会人になって一人暮らしを始めてから貴方と結ばれた。縁を切っていたはずなのに、また妹に殺された。
何度も何度も色々な方法を試してみるけれど、必ず最後は妹に殺されるの。
例えば、貴方と結ばれない道を選んでみたの。でも貴方に振られたと言って妹は私を殺した。
いつかの人生では貴方が私を守って先に死んだこともあったかしら。まぁその後すぐに私も殺されたのだけれど。
どんな方法でも駄目なの。
必ず妹に殺されるの。
でも今回の人生は違ったわ。
私が妹だった。
だから私、いつも私が亡くなる日にわざと事故に遭うように仕向けて姉を殺したわ。
今回は上手くいった。
ただ貴方は私に愛をくれないようだけれど。
それでもいいわ。
生きていれば勝ちなの。
これで良い。
これが良いのよ。
―――――
ずっと貴女が好きだった。
貴女以外を愛せなかった。
だけれど毎回貴女は殺される。
俺と結ばれたすぐ直後に。
色んな方法を試したんだ。
何度も何度も試した。
しかし何一つ上手くいかなかった。
ねぇ貴女も記憶を持っているんでしょう?
俺と同じで違う記憶を。
1度目の人生は貴女が俺とは違う人と結ばれた。
幼馴染みだから分かってくれる、ずっと一緒にいられるなんて甘い戯言を思っていたら他の男に貴女を盗られた。
だから殺した。貴女と俺を。
2度目の人生では上手くやったはずだった。でも貴女と結ばれた直後に貴女は貴女の妹に殺された。
俺は迷わずやり直しを選択した。
3度目の人生では貴女と付き合った直後に逃げた。
でもやっぱり貴女は貴女の妹に殺された。
4度目の人生では社会人になるまで貴女と付き合うのを待った。一人暮らしになって貴女以外は家の場所を知らないはずなのにまた貴女は貴女の妹に殺された。
5度目も6度目も同じだ。何度やっても貴女は貴女の妹に殺される。
でも今回だけは違った。
俺がやり直しを始めて100度目の人生。
神様は選択をくれた。
1、今まで通り貴女が姉である。
2、貴女は妹になり殺されずに済むが俺は貴女を愛していると伝えられない(姉を愛していることになる)
迷わず後者を選んだ。
だって変えたかったから、運命を。
きっとこれで最期なのだ。
最後の人生なのだと無意識に思った。
これが俺の贖罪なのだ。
愛する人を失うことが、愛する人に愛の言葉を呟けないことが。
俺が1度目の人生で貴女と男の仲を引き裂かなければ貴女は幸せのままだったのに。
俺は貴女の幸せを奪ってまで貴女を手に入れたのだから……
きっと貴女はまだもう一度貴女の人生が残っていることだろう。俺はそこに存在しないだろうが。
それでいいのだ。
本来ならきっとそれが正解なのだ。
貴女の運命の相手は俺ではなかったのだ。
ごめん、美咲。
美咲が不幸になるのも、美咲の妹の美優が不幸になるのも全て俺のせいだから。
本来なら美咲と美優の仲はすごく良いものだった。
俺が……俺が罪を犯したばかりに、、、、
『好きだよ、美優』
『愛してる、愛してるよ、美優』
―――――
また過去に戻った。
私は姉だった。
やはり前回の人生は少し特殊だったらしい。
何故だろうか?
なんて考えることも疲れてしまった。
この人生も以前と何も変わらないだろう。
そう思っていたから。
でも違った。
貴方がいなかった。
貴方の存在ごと消えていた。
なんで?
なんで貴方は居ないのだろうか、、、?
また私が死ぬ日が来た。
しかし私は死ななかった。
その代わり一通の手紙が届いた。
『美咲へ
美咲、俺は美咲に謝らなければならないことがあります。美咲はこの人生のループの原因を知っていますか?否、知らないことでしょう。
ですのでここに綴ることにします。自分勝手でごめんなさい。
このループの原因を作ったのは俺です。
俺が俺の1度目の人生で美咲が俺以外の男と付き合っているのが許せなくて俺が美咲を殺しました。
美咲の幸せを奪ったんです。
ごめんなさい。
謝って済む問題じゃないことも承知の上です。
そして前回の人生で美咲が妹になったのも俺が選んだからです。美咲は妹になる代わりに殺されずに済むが、俺は美咲を愛していると伝えられない(美優を愛していることになる)という選択をしました。
苦しめてごめんなさい。
でもこれだけは忘れないでください。
俺は本気で美咲のことを愛してます。
p.s この人生では美咲が幸せになれることを願っています。 セイより。』
美咲の目からは涙が溢れていた。
知らなかった。
セイもループに気付いていたなんて。
……セイがループの原因だったなんて。
そんなの知らなかった……
セイがいない現世をどう過ごせばいいのだろうか。
セイが全ての希望だったのに……
嘘よ、嘘だと言って……
その時だった。
私の前に選択肢が浮かび上がってきたのは。
1、このままの人生を。
2、私に関わる記憶をこの世の全ての人から消す代わりにセイを救う。
私は迷わず後者を選んだ。
だってセイがいない人生なんて考えられなかったから、、、
私は忘れられたっていい。
それでいい。
セイが救えるなら、、
俺は気付いたらそこに立っていた。
いつから、なんて覚えていない。
自分が何をしに来たのかも分からない。
ただ、、
気付いたら立っていたのだ。
そこに。
『ガチャ』
「セ……イ……?」
「?すみません、人様の家の前で突っ立っていたら迷惑ですよね」
何故いるのだろう。
瞬間そう思った。
でも無意識だったのかもしれない。
無意識にも私を追い求めて来てくれたのかもしれない。
そう思うと感情が込み上げてきて涙が止まらなくなった。
「あの………?」
何故泣いているのかは分からなかった。
でもそれが全てなのだと告げられているような気がした。
俺はこの人を知っているはずだ。
この人を追い求めてここに来たのだと思う。
その理由は思い出せなくてもそれだけは分かった。
「……美咲です。」
「あ、俺はセイです。」
「ふふっ、知ってますよ、誰よりも。」
何も知らない人からすれば怖い言葉だろう。
仮にも初対面なのだから。
だけれど俺にはそれは何よりも幸福なことだと思えた。
「俺は貴女のこと分かりません」
「はい。それも分かってます。」
それはそうだ。
だって私が選んだのだから。
「でも……教えていただけませんか?俺と貴女のこと。」
「え………?」
びっくりした。
だって気持ち悪いと思われると思っていたから。
教えて欲しいなんて……そんな期待させる言葉、、
「ダメですかね……?」
「あ、い、いえ!!むしろ大歓迎です!」
無意識のうちに口から出ていた言葉。
まるで自分の中に違う自分がいるみたいだ。
それから私はセイに私たちのことについて全てを話した。
セイは相変わらず思い出せないままだったが、それでも私たちは恋仲になった。
ある時、セイが言った。
「俺、何度生まれ変わっても美咲以外選べないよ」
と。
私も言った。
「ええ、私もよ。セイがいなくては世界が成り立たないわ」
と。
意味なんてないと思っていた。
この恋は叶わないものだとも、、
でも意味を失くしていたのは自分自身だった。
しっかりと意味はあったのだ。
たとえどんな運命に引き裂かれようとも永遠に君と…