猫神。
「おや、帰ったのかい」
「ミーコさん?」
〈傷痕〉をくぐり抜けた私達を、魔王サマ達とキジトラ白の小柄な猫が迎えてくれた。
ミーコさんは私が子供の頃に家にいた猫で、その正体は気まぐれに世界を渡る猫神だ。
私をこの世界に転生させたのもミーコさんだ。
ちなみに、しっぽは八本に分かれている。
「どうしたの?」
「〈傷痕〉を閉じるために来ていただいたのです」
私の疑問にはヴラドが答えてくれた。
なるほど。
んー、つまりミーコさんが世界を渡るのは〈傷痕〉を閉じて回るため……。
いや、違うか。
単に気分次第でふらふらしているだけだろう。
神様とはいえ、猫だものな……。
「それにしても、つかさはたいしたもんだねぇ」
ミーコさんは私を見ながら、満足そうに笑った。
「さすが、私が見込んだだけのことはある」
「……」
いやいや、見込んだのはうちの猫達の方でしょうが。
私は単なるオマケです。
まったく、都合の悪いことは忘れるんだから。
これだから、猫ってやつは……。
しかし、続くミーコさんの言葉に私は首をかしげた。
「海神と私の依頼を同時にこなしてくれるとはねぇ」
……ミーコさんから依頼なんて受けていたか?
「ほら、この子の呪いを解いてくれって海神が頼んだ時さ」
この子、と言われて魔王サマがなんともいえない表情を浮かべた。
「滅びそうな世界があるから、ちょちょいと救ってきておくれ、って頼んだだろう?」
「ああ、そういえば」
そんなことも言われたような……。
ん?
つまり、その世界というのは。
「エアラ達の世界!?」
ミーコさんは満足そうに、のどをごろごろと鳴らした。
えー、気づかなかった……。
「さて、依頼料はどうしたもんかねぇ」
ミーコさんが首をかしげる。
「あの世界の神様にでもなってもらおうか」
別に、あの世界にいなくても神様にはなれるからね、とミーコさんが笑う。
いらん!
エリザベートといい、ミーコさんといい、妙なフラグを立てるんじゃない!
うちの猫達では、神は神でも破壊神とかにしかならんだろうが!
「いいよ、別に」
私はため息をついた。
「依頼を受けたつもりもなかったし」
「そうかい? まぁ、でも一応依頼料としてお金は払っておこうかねぇ」
「……」
私の視線に気づき、ミーコさんはにたりと笑った。
「そうしておかないと、次の依頼を頼みにくいからねぇ」
だと思ったよ!
というか、その笑いかたはやめろ!
神様じゃなくて猫又にしか見えん!
私とミーコさんのやり取りを、魔王サマ達が困ったように見ていた。
まぁ、魔王サマ達にしてみればミーコさんも神様だものな……。
それと。
このところばたばたしていてすっかり忘れていたが。
魔王サマにはいまだに猫耳としっぽがついている。
あー、うん。まだ呪いといてなかったな。




