帰還。
「交代で下がれ!」
「まだ□キル!」
「一斉に力尽きたら、全滅するぞ!」
猫がいない場合を想定して戦え!
私の言葉に、エアラ達ははっとしたようだった。
ふと見れば、後方で戦いを見守っていた人達が急ごしらえの救護所のようなものを作り、怪我人の手当てをしていた。
比較的年配の男性が指示を出し、魔作物や水の用意をしている。
なるほど。彼もまた、リーダーの一人になる人間か。
前線に出るだけが戦いではない。
フラーの一部が、畑を狙いだした。
抵抗する人間より〈食べやすい〉と判断したのか?
「くぅ、『土魔法』!」
「にゃお!」
くぅが畑の手前の地面を隆起させ、土の壁を造る。
それを足場に、おこんが宙へと飛び上がる。
ひらりひらりと舞うように、おこんがフラーを次々と引っかいて落とす。
おこんのスキルで麻痺したフラーが、ぼとぼとと落ちてきた。
それに鍬を持った連中がとどめをさした。
ようやくフラーの姿がなくなった頃には、太陽が一つだけになっていた。
この世界では、夜になったということだ。
んー、けっこう時間がかかったな。
まぁ、猫達が手加減していたのだから仕方がないか。
フラーの襲撃の中で、エアラ以外の何人かも魔法を使えるようになっていた。
これでもう大丈夫だろう。
ほかの人達には、エアラ達が教えればいい。
フラーは食べられないことや死体の始末の仕方を教える。
みんな疲れていたようだったが、真剣に私の話を聞いていた。
そよそよと緑の葉が風に揺れる。
この世界は再生を始めた。
今後どうなるかは、エアラ達次第だ。
さて。
「みんな、帰るよー」
「……!」
手のひらサイズに戻ったりゅうたろうが、ひらりと私の肩に飛び乗った。
「も、もウ少し……」
引き止めようとするエアラに、首を振ってみせる。
「向こうも気になるしね」
フラーが〈傷痕〉を通ってこの世界にきたのなら、裏世界にも被害が出ているかもしれない。
まぁ、魔王サマ達がいるから大丈夫だとは思うが。
それに、あまり長居をするとエリザベートに言われたように、うっかりカミサマになってしまうかもしれないしな。
魔王だけで十分だ……。
「ばいばい、エアラ。エリザベート達を助けようとしてくれてありがとう。がんばってね」
「ありがトう。がんばる」
目を潤ませながら、エアラはにっこりと笑ってみせた。
「……」
もう二度と会うことはないだろう。
「キング、『空間転移』」
キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は〈傷痕〉の前に移動した。
空に浮かぶ雲が、ゆっくりと風に流れていく。
「……さて、帰ろうか」




