目覚め。
キングの影が長く伸び、フラーの影と重なる。
その瞬間にフラーは体の自由を奪われ、なすすべもなく地上に落ちてくる。
おこんは畑を狙って降りてくるフラーに狙いをしぼったらしく、わくわくしたように目を輝かせながら待ちかまえていた。
いや、だから、猫の狩りは参考にならんと言っているでしょうが。
そもそもの身体能力が、人間と猫では違いすぎるんだよ……。
せりとよつばはエアラ達をかばうように立ちふさがり、これもまた猫らしく、素早くフラーの首筋に噛みつき一撃で仕留めていた。
……まぁ、いいけど。
せりの「気配察知」はともかく、よつばのスキルもりゅうたろうと同じで特殊すぎるしな。
食欲最優先だものな……。
私は降りてきたフラーに、大鎌を振り下ろした。
「!」
しまった! 浅い!
大鎌の刃はフラーの翼を傷つけるだけで終わった。
青い羽毛が飛び散る。
フラーは牙の生えた口を大きく開け、私に食らいつこうとしてきた。
私は後方に飛びすさり、大鎌をかまえ直す。
襲いかかってきたフラーの首に狙いを定めて、横一線に大鎌を振り抜いた。
胴体と離れた首が宙に飛ぶ。
妙に小さい目が、こちらを見ていた。
「▼■◇◎!」
私を見ていた連中が、猫達がまだ弱らせていないフラーに向かっていった。
「バカ! よせ!」
確かに人間でもフラーは倒せるが、私の大鎌は火の神様とドワーフの鍛冶師がうっかりやり過ぎてしまった特製なのだ。
それに引きかえ、彼らが手にしているのは鍬だ。
武器ですらない。
案の定、まるで太刀打ちできない。
フラーの翼に打ちつけられ、地面に倒れ込む。
這って逃げようとする連中に、フラーが襲いかかった。
「せり! よつば!」
私の声に、せり達が振り向いた。
だが、地面を這う獲物に狙いを定めたのか、フラーが次から次へと降りてくる。
ダメだ、間に合わない……!
その時、激しい風がフラーを吹き飛ばした。
福助? いや、違う。
出力の加減ができない福助では、倒れている人間ごと吹き飛ばしてしまうはずだ。
「できた! でキたよ!」
興奮したように叫んでいたのは、エアラだった。
私と目が合うと、頬を紅潮させながら嬉しそうに笑った。
「魔法、できタ!」
「エアラ、スゴい!」
いくら魔力に満たされているとはいえ、見ていただけで魔法を使えるようになるとは、おそらく相当センスがあるのだろう。
異世界の人間に物怖じせずに接し、言葉も覚えた。
助けを必要としていれば手を貸す。
状況を判断する能力もある。
エアラは、間違いなくこの世界の新しいリーダーの一人になるべき人間だ。
唯一、不安があるとすれば。
どうやら「風魔法」の使い手らしいエアラの師匠が、常に全力な福助だということだ……。




