指南。
「エアラ達は早く逃げ……」
いや、待て。
本当にそれでいいのか?
もし、私が思ったとおりフラーが世界を渡る〈渡り鳥〉だとしたら、襲撃は今回だけではすまない。
次はいつになるか分からないが、その時、猫達はここにはいない。
表世界のように神様達の守護もなければ、裏世界のように魔王サマの元で統一された兵隊さん達もいない。
猫達に翻弄された様子をみれば、そもそもの戦闘能力は高くはなさそうだ。
けれど、魔力が満たされた今なら。
「せり、よつば。みんなを守って」
「にあん!」
よつばがふさふさのしっぽをぴんと立てて鳴いた。
「くぅ達は魔法で倒して。……なるべく手加減して」
「にゃん!」
おこんは不満そうにしっぽをばんばんと地面に打ちつけた。
くぅはめんどくさそうに、ため息をついた。
仕方ないでしょ。
猫が獲物を狩るのを見ても、参考にはならないんだから!
「りゅうたろうとコハクは、群れから離れた個体を始末して」
「……!」
まぁ、りゅうたろう達は特殊すぎて参考にならないしな。
私は無限収納から大鎌を取り出した。
軽く振ると、紅い刃から炎が舞った。
振り返ると、エアラ達は顔をこわばらせながら空を見ていた。
「エアラ達は、猫達が魔法を使うのを見て覚えて」
「う、ウん。分かった」
「ほかの連中は、私を見ていなさい」
これでも、それなりに修羅場はくぐってきている。
群れはムリでも、一羽ずつなら倒せる。
「■◎▼△□!」
元はフードをかぶっていた連中の一人が、なにやら興奮した様子で叫ぶ。
まわりの反応からして、多分罵倒しているのだろう。
「やかましい!」
私は大鎌を突きつけた。
「見ろ! 学べ! 戦いかたを覚えろ!」
〈傷痕〉が閉じれば、私達はもう二度とこの世界にはこない。
そして、都合よく助けが現れたりはしないのだ。
表世界でも、神様達が介入するまでにどれほどの悲劇があったのか。
「大切なものは、自分達で守れ!」
私の言葉を聞き、エアラ達はきっ、と顔をあげた。
ほかの連中は鍬を手に持った。
……農具は大切にしてほしいのだが。
いや、うん。分かっている。
この状況では仕方がない。
「にゃあ!」
せりが鋭い声で鳴いた。
来たな。
「にゃお!」
チャビが「雷魔法」でフラーを撃ち落とす。
焦げ臭い匂いがして、何羽かが地上にふらふらと落ちてきた。
私が大鎌でとどめをさすのを見て、鍬を持った連中もとどめをさそうとフラーに近づいた。
「う■っ!?」
「噛まれるなよ!」
地上に落ちてもまだ、フラーは何かを食らおうと口を大きく開けている。
鳥でありながら、フラーにはくちばしではなく牙の生えた大きな口がついている。目は妙に小さい。
くぅがゆらりとしっぽを揺らすと、幾千もの剣が現れ、フラー達の翼をつらぬいた。
ばたばたともがきながら、フラーが落ちてくる。
さすが、チャビとくぅは私の言いたいことをよく理解してくれている。
この世界の人間に、戦いかたを教えなくては。
「にゃ!」
福助の「風魔法」がフラーを吹き飛ばし、それをりゅうたろう達が追っている。
「にゃ……」
困ったように、福助が私の顔を見上げた。
ああ、うん。
常に全力な福助に、手加減などムリだよね。
分かってますよ……。




