新しい風。
ひたすらに働き、苗を植える。
植えたところから、エアラ達が水をまいていく。
さすがに、猫達が魔力をこめた時のようにでたらめな速度では成長しなかったが、それでも通常ではあり得ない早さで苗が育っていく。
成果がはっきりと目に見えたおかげなのか、全員がもくもくと働いた。
「さて、こんなものか」
ふぅと息をつき、辺りを見回す。
この世界にきた時は見渡す限りの砂漠だったが、今ははるか遠くまで緑におおわれている。
あー、うん。うっかり私が崩してしまった建物の残骸は見なかったことにしておこう……。
そよ、と緑の葉が風に揺れる。
「え……」
風? 無風だったこの世界に?
思わず空を見上げると、三つの太陽と雲が浮かんでいる。
雲まで出てきた。
んー、そういえば雲って海面の水蒸気が空に昇って……。
はるか昔に学生だった頃の記憶をしぼりだす。
海はないが、エアラ達が魔力をふくんだ水を畑に大量にまいた。
それが雲になったということは、あれは魔力をふくんだ雲だということになる。
つまり、今この世界の大気には魔力が……。
んー、よく分からないが、とりあえずこの世界は再生し始めたようだ。
「よし、いい感じだ」
私がにっこりしていると、せりが鋭い声で鳴いた。
「にゃあ!」
耳を伏せたイカミミ状態で空を見上げている。
「気配察知」か!
せりがにらみつけている方を見ると、空が一面青いものでおおわれている。
それは、すごいスピードでこちらに向かって近づいてきていた。
まさか、あれは。
「フラーか……!?」
何度も遭遇した青い鳥の群れ。
植物も動物も人も全て食べ尽くす〈災いを呼ぶ鳥〉!
どうして、この世界にフラーが?
いや、あいつらがきた方向には〈傷痕〉がある。
裏世界から〈傷痕〉をくぐってきたのか?
魔族や獣人の兵隊さん達が警備にあたっていたはずだ。
彼らはどうなった?
いや、待て。落ち着け!
今考えることはそこじゃない。
「エアラ、青い鳥の群れのことは知っている?」
「私は知らないケど……」
エアラが小さく首を振る。
だが、フードをかぶっていた連中の一人が叫んだ。
「フラー■! ずっ▼昔に滅◎だはずな◇に!!」
「!」
フラーは、この世界にもいたのか?
いや、表世界にも裏世界にもフラーはいた。
やはり、やつらは渡り鳥なのか?
数十年、数百年単位であらわれる〈災いを呼ぶ鳥〉。
やつらは、異なる世界を渡る〈渡り鳥〉なのか……?
「りゅうたろう、コハク! 大きくなって!」
通常サイズに戻ったコハクの背中に、りゅうたろうがひらりと飛び乗った。
フラーなら猫達の敵ではない。
ただの獲物だ。
だが、できたばかりの畑に被害を出すわけにはいかない。
この世界にとって、やっとできた希望なのだ。
それが目の前で荒らされれば、彼らの心は折れてしまうかもしれない。
そんなことはさせない。
「みんな、行くよ!」




