猫の手も借りたい。
エリザベートやほかの捕まっていた獣人達の証言により、魔王サマ達が全面的に協力してくれることになった。
頑なに口を閉ざすものもいたが、彼らのされたことを思えば、それは仕方がないだろう。
反対だ、やつらなど滅んでしまえ、と言わないだけマシだと思う。
魔作物の苗、ボーショという真っピンクの芋の種芋、どんな季節でも実をつけるルッコの苗木など、続々と集まってくる。
それを片っぱしから無限収納に詰めこむ。
ばたばたと忙しく駆け回る私達を尻目に、猫達は魔王サマのお城の庭でのんびりぐだぐたとくつろいでいる。
いや、うん。分かってはいる。
今、猫ができることは何もない。
だが。
少しくらい空気読めよ!
猫の手も借りたいんだよ、こっちは!
どうにかこうにか準備を整え、私達は再び〈傷痕〉をくぐり抜けた。
すでに大中小の三つの太陽が昇っている。
無風だ。
生き物の気配がしない。
正直なところ、裏世界の作物がこの世界でちゃんと育つのかは分からない。
魔力と水さえあれば育つ魔作物は、まぁ、大丈夫だとは思うのだが。
おそらくだが、裏世界の作物も元々はその大半が別の世界から入ってきたものだ。
あの世界は、異なる世界からありとあらゆるものが流れ込んできている。
偶然迷い込んだであろうものもあれば、滅びゆく世界から移住してきたもの達が持ち込んだものもある。
人も動物も植物も、雑多ではあるがどうにかやっている。
だから。
「まずは、やるだけやってみましょうかね」
やる前からくよくよ考えていても仕方がない。
ダメだったのなら、その時にまた考えればいい。
「キング、『空間転移』」
キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は異動した。
私達の姿を見ると、エアラが駆け寄ってきた。
手には赤いブリキのじょうろを持っている。
「水出せるよウになった!」
嬉しそうに笑いながら、エアラは実際に水を出してみせた。
エアラだけではなく、ほかの何人かも水を出せるようになったようだ。
私達が裏世界に戻っている間に練習していたのだろう。
とりあえず、水の心配はしなくてもよさそうだ。
エアラ達と、元はフードをかぶっていた連中は、少し離れた場所でそれぞれ固まっていた。
別々のグループを作ったようだ。
今までのことを考えればムリもない。
まぁ、本格的に揉めさえしなければ、仲よしこよしである必要はないけどな。
「さて、今日も働けぃ!」
私の言葉を聞き、みんなが用意を始める。
エアラのように張り切っているものもいれば、しぶしぶといった様子のものもいる。
で、猫さん達や。
手は貸してくれなくてもいいが、よけいな手間は増やさないでくれるとありがたいのですがね……。




