別室。
この世界のことは、まぁ、いったん置いておくとして。
よつばと人魚の姿がない。
「……」
いや、この部屋にいた獣人達は、エリザベートのように比較的この世界の人間に近い姿をしている。
連れてこられたはずの人魚や小人族、獣人達のなかでも獣に近い姿をしたもの達は、この部屋にはいなかった。
エアラにたずねると、奥へ続いているらしい通路を指さして言った。
「向こうの部屋に連れテいった」
奥の部屋には、エアラも入ったことはないそうだ。
よつばが先行しているから、鍵は開いているだろう。
「エリザベートはここに残って、みんなを守って」
「……分かりましたわ」
神妙な顔でエリザベートが頷く。
勘のいい子だ。
人とは遠い姿を持つものを別室に連れていったということは。
……目をそむけたくなるようなことが行われているかもしれない。
「コハクも残って」
「ピィー!!」
私の言葉に、抗議するようにコハクが高い声で鳴いた。
いや、コハクがいると隠密行動がとれないんだよな……。
猫と違って、気配を消せないし。
「なんかあったら、大きくなってこの建物ごとぶっ壊してほしいのよ」
キングがいれば、私達の方はどうとでもなるし。
ここをエリザベートだけでは守りきれなかった場合のことも考えておかなくては。
「よろしくお願いしますわ」
「ピィー……」
エリザベートが笑いかけると、コハクはしぶしぶといった感じで彼女の隣におりてきた。
「みんな、行くよ」
手のひらサイズのりゅうたろうが、私の肩にひらりと飛び乗った。
せりがぴくぴくとひげを動かしながら、前を歩く。
私は静かに動くように気をつけたが、猫達はいつものようにふらふら歩いていても物音ひとつたてない。
あの福助すら、気配がしないんだからな……。
通路のところどころに、とろんとした表情の連中が座り込んでいる。
よつばの「魅了」にやられたやつらだろう。
コレをたどっていけば、少なくとも人魚の居場所までは行けるわけか……。
ぴたり、とせりが扉の前で立ち止まった。
私を振り返りながら、かりかりと扉を引っかいている。
「せり……?」
なんだろう、せりの表情が切羽詰まっているような……。
うん、急ごう。
案の定、扉の鍵は開いていた。
中に入ると、妙な匂いがした。
これは、薬品か……?
病院の匂いに近い。
目立つところに大きな水槽があった。
だが、水は妙な色に濁り、人魚が死んだ魚のように水面にぷかりと浮いている。
その水槽の前に、よつばが座っている。
前足を水槽にかけ、人魚の様子をうかがっているが、困惑しているように見える。
「よつば」
名前を呼ぶと、よつばは振り返り私の元に急いで駆け寄ってきた。
「にあん……!」
何かを訴えるように、よつばが鳴いた。
……うん、分かっている。
エリザベート達を連れて来なくて正解だった。
「ぶっ飛ばすよ……!」




