猫の人。
もしかすると、この世界の人間はまだくぅのことを魔王サマと勘違いしている可能性があるのか。
いや、うん。ある意味、間違ってはいないけどな。
多分、うちの猫達より魔王サマの方がマシだったはずだろうし。
なぜか、くぅ達は執拗に攻撃をしている。
んー? 猫達に直接攻撃してきたのは吸血族の裏切り者で、フードの連中ではなかったはずだ。
あとは、どちらかと言えば、こちら側から攻撃をしかけていたような……?
なんで、こんなに目の敵にしているのだろう?
コハクが捕まったからか?
ふと気づけば、茶色と白のふかふかの猫の姿がない。
「うふふ……」
よつば!
人魚は食べるなと、何回言えば分かるんだ!
「せり、よつばを『気配察知』!」
あーんと大きな口を開けて、めり込んでいるやつの足に噛みつこうとしていたせりが振り返った。
いや、だから、なんでそこまで攻撃するんだよ……。
相手はもう動けないんだぞ?
せりがぴくぴくとひげを動かしながら、歩き出した。
まだ攻撃したりない様子のほかの猫達にも声をかけると、しぶしぶながら私達のあとをついてきた。
もしかして、この世界は攻撃性を増すナニかでも存在しているのか。
いや、でも、私とコハクは通常どおりだしな……。
せりのあとをついていくと、半分砂に埋もれたドーム型の建物らしきものがあった。
「にゃあ!」
せりが私を振り返って鳴く。
入り口がわずかに開いている。
ここか。
つまり、連れてこられた人魚や獣人達もここにいるのだろう。
おそらく、エリザベートも一緒だとは思うが。
「だけど、どうやって入ろうか……」
わずかに開いている隙間からは、猫しか入れそうにない。
しかも、「解除」ができるよつばがいないのだ。
「んー、猫達だけ行かせる……」
いや、ダメだ。
中がどうなっているか分からない。
フードの連中はともかく、獣人達に被害が出ては困る。
私が頭を抱えていると、ドームの中から声が聞こえてきた。
「猫ノ人でスカ?」
「え、ああ、うん」
まさか、ここに来てまで「猫の人」と呼ばれるとは思っていなかったが。
「今、開ケまス」
がこんっと音がして、入り口がせり上がってきた。
……罠か?
まぁ、でも、罠だとしてもどうとでもなるか。
猫達を振り返って、私は頷いた。
上空を旋回しているコハクにも声をかける。
「コハク、小さくなって」
ドラゴンサイズでは入れそうにもない。
コハクは素直に従い、柴犬サイズに身体を縮めた。
テイムしているはずの猫達が指示に従わないで、契約していないドラゴンの方が言うことを聞いてくれるのは、どうしてなんでしょうかね……。
私は入り口に目を向けた。
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
「さぁ、行こうか」
鬼が出たところで、酒天童子みたいのだったら怖くもなんともないけどな。




