ヤバイ粉(猫用)。
いや、しかし、あの状態のくぅ達に何を言ってもムダだろうしな。
下手をしたら、こっちがやられる……。
いっそのこと、エディール草の花粉でも吸わせたいところだが。
んー、いや、アレがあるじゃないか。
「でもなぁ……」
アレはヤバい。
家の中をめちゃくちゃにされて、テレビを買い替えるはめになったことを思い出し、私はため息をついた。
あー、でも、ここは私の家ではなく、魔王サマのお城だしなぁ……。
「……なんか、ワルい顔をしてねぇか、あいつ?」
世界が滅ぶよりはいいよねぇ……?
「悪ノ親玉ノようナ気配がしているノだが……」
聞こえているからな。
あとで、覚えておけよ?
「おこん、『創成魔法』! またたび!」
「にゃん!!」
目をきらきらさせながら、おこんが鳴いた。
どさどさっと、小さなビニール袋に小分けされた茶色の粉が大量に現れた。
……あー、そうか。
向こうで猫達にあげていたのは、爪研ぎのおまけについてきていたやつだったから、おこんにとってのまたたびってコレなのか。
仕方がない。
私は小さい袋を次々と破いては、部屋の中にばらまいた。
「つかさ殿、これは?」
「ヤバい粉(猫用)! みんなも開けて!」
「は、はい」
大男達が小さな袋をちまちまと破いている光景は、少し面白かった。
「うなぁぁ……?」
くぅがふんふんと空気の匂いをかぎだした。
チャビは急いで、私の元へ駆け寄ってくる。
よし! これで、世界は救われた!
……のは、いいのだが。
「……!」
「にあん! にあん!」
「にゃああああ!」
始まってしまった……。
くぅはひたすら舐めまくるタイプだし、チャビもごろごろと甘えてくるタイプだからいいのだが。
ほかの猫達は、またたびに酔っぱらうとテンションのあがるタイプなのだ。
りゅうたろうやよつばはほかの猫達にちょっかいを出し、おこんやせりは壁をかけ登る。
福助! 部屋の中で「風魔法」はやめなさい!
キングとりゅうたろうは、気を失っている犯人の上で取っ組み合いを始めた。
あいつ、目が覚めたら身体中引っ掻き傷だらけだろうな。
あいつのせいで世界が滅びかけたのだから、まぁ、自業自得か。
部屋の中はめちゃくちゃだが、世界が救われたのだから、まぁ、ささいなことだろう。
よし、これで一件落着!
「いや、なに、一仕事終えましたみてぇな顔してんだよ」
「アレをどうする気ですか?」
あー、うん。
またたびって猫だけではなく、ほかの猫科の動物にも効くんだよな……。
ライオンの獣人であるブエルと、猫になる呪いをかけられた魔王サマが、またたびに酔っ払って床をごろごろと転がっている。
「……」
酒天童子達の視線が冷たい。
仕方がないだろ!
世界を救うための、尊い犠牲だ!!




