滅亡への道。
適度な運動のあとの、心地よいまどろみを邪魔されたくぅの怒りは凄まじかった。
いや、犯人の寝ているベッドで眠ろうとしたあんたも悪いでしょうが!
とはいえ、猫に正論は通用しない。
逆立った毛がばちばちと静電気を起こし、牙をむき出した顔はもはや猫ではなく、魔王そのものだった。
足元からゆらりと炎が立ちのぼる。
「うなぁぁぁぁおぅぅぅぅぅ!」
くぅの「威嚇」で、空気がびりびりと震える。
福助達は慌ててベッドから飛び降り、部屋の隅で「僕達には関係ありません」という顔をしている。
ああ、ヤバい!
そうだ、チャビに仲裁を頼もう。
だが、チャビを見た瞬間に絶望した。
目をらんらんとさせたチャビが、犯人を睨み付けていたからだ。
「うぁぁぁぁぁおぅぅぅぅぅ!」
お前もか!
あー、うん。そうだよな。
大切な姉弟猫のくぅが目の前で襲われたのだから、チャビがキレるのも仕方がない。
だが、あんた、最近キレやすくなってないか!?
チャビの「殺気」で、妙に息苦しい。
廊下の方から、ばたっとかガチャンとかいう音が聞こえてきた。
兵隊さんやメイドさん達が気を失って倒れたのだろう。
「どうするんだよ、これ……」
魔王サマ達は顔こそこわばっているものの、誰一人膝をつくことすらしない。
さすがだ。
ちなみに、犯人はとっくに泡を吹いて気を失っている。
だが、やりばのない怒り(×2)をどうしたらいいものか。
「この城には『結界』が張ってある。いったん退避して……」
ブエルの言葉に、私とヴラドは顔を見合わせた。
「あ、ごめん。『解除』済です」
「はぁ!? うちの術師が一年がかりでかけた『結界』だぞ!?」
酒天童子が叫ぶ。
「ナぜ……」
ジークフリートが呆れたように呟いた。
いや、キングの「空間転移」を使うのに邪魔だったというか……。
それに、お城の転移魔方陣を使うと私達が戻ってきたことに気づいて犯人が逃げてしまうかもしれなかったからだ。
「いや、それでよかったのだ」
フードを外しながら、魔王サマが言った。
こんな時だというのに、頭の上のネコミミがぴょこんと見えて妙に和んでしまう。
「〈これ〉と反発しあったら、城ごと消し飛んでいただろう」
……〈これ〉って言われた。
「だが、〈これ〉をどうします?」
「城にいるものはともかく、このままでは死人が出るな」
魔王サマ達の視線が、ゆっくりと私の方へ向けられた。
「つかさ殿?」
「責任取れよ、お前!」
「テイマーなんですよね?」
わ、分かってますよ!
私だって、世界が滅びるところは見たくない!




