あ。
とはいえ、この吸血族の男が一番悪いことには変わりはないけどな。
ブエル達の調査結果から、今まで誘拐されたものは多いが死人は出ていないことは確認されている。
自分達の一族を皆殺しにしようとしたのは、この男なのだ。
「エリザベートはどこ?」
「……」
「フードをかぶった連中のところ?」
「!」
私の言葉に、男ははっと顔をあげた。
フードをかぶった魔王サマをにらみつける。
「まさか、私を裏切ったのか……!?」
……ん? もしかして、魔王サマをフードの連中と間違えているのか?
いや、待て。
だとしたら、エリザベートの居所を聞いたりしないだろう。
んー、だいぶ混乱しているみたいだな。
面倒なことにならなければいいのだが。
「……貴様さえ、貴様さえいなければ!」
男の目から血が流れ、爪が長く伸びる。
「りゅうたろう!」
肩に乗っていたりゅうたろうが、私の指示で飛び降りようとした瞬間。
「「「「あ」」」」
男と魔王サマをのぞく全員が、間抜けな声をあげた。
「魔王! 覚悟しろ!!」
そう叫んで男が襲いかかったのは魔王サマではなく、ベッドの上で寝ていた猫だったからだ。
あー、そうか。
こいつが魔王サマに呪いをかけた張本人か。
おそらく、フードをかぶった連中から呪いの媒体になるものを受け取り、それを魔王サマが触れるかなにかするように細工したのだろう。
ヴラドの城と、この城は転移魔方陣で繋がっているから難しくはなかったはずだ。
だが、呪いの効果を確認することはできなかった。
ヴラド達も、魔王サマの状態は外部には知られないようにしていた。
つまり、この男は魔王サマが猫になったと思い込んでいたのか。
……いや、うん。冷静に分析している場合ではないのは分かっている。
だが。
よりによって、こいつ……。
「ばっ、おまっ……!」
「た、退避の指示を……」
「こノ世界もまた滅びゆくノか……」
酒天童子達が顔をこわばらせる。
ジークフリート! 縁起の悪いことを言うんじゃない!
魔王サマだけが不思議そうに首をかしげている。
あー、魔王サマは見たことがないんだったな……。
追いつめられた吸血族の男が襲いかかったのは、よりにもよってベッドの上でうつらうつらとしていたくぅだったのだ。
……いや、まぁ、ある意味間違えてはいないのだが。
どうするんだよ! 滅亡フラグがたったぞ!?
魔王が、魔王が目覚める……!!




