裏切者。
「キング、『空間転移』」
「エリザベートは!?」
「まだ動かしてはいけません!」
私の言葉を聞き、ヴラドと薬師が同時に叫んだ。
「エリザベートの行方なら、あいつが知っているでしょ」
「あいつ……?」
「キングの『空間転移』なら、直接行ける」
「直接……?」
二人とも怪訝そうな顔をしていたが、説明している暇はない。
「よつば。魔王サマのお城の結界、キングとタイミングを会わせて『解除』して」
「にあん!」
「キング、『空間転移』!」
キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共にお城の中に移動した。
ここは、最初に謁見した広間か。
だが、魔王サマの姿はない。
掃除をしていたメイド魔族さん達が、呆気にとられたように私達を見ていた。
「どうやって……?」
「魔王サマはどこ?」
「あの、吸血族の方が目を覚ましたので事情を聞きに……」
「酒天童子達は?」
「リリス王女殿下以外の方は、ご一緒です」
リリスはいないのか。
なら、都合がいい。
私は薬師を振り返った。
「ここは、任せていいね?」
「……はい」
きっ、とドライアドの薬師は頷いてみせた。
「せり、『気配察知』! 急ぐよ!」
「にゃあ!」
魔王サマの気配を追って、せりが走り出す。
私達もあとに続いた。
「つかさ殿! どういうことですか!?」
同じように走りながら、ヴラドが叫んだ。
「裏切者がいるんだよ!」
「裏切者? まさか……」
「にゃあ!」
突き当たりの部屋の前で、せりが鳴いた。
ここか。
乱暴にドアを開けて飛び込むと、フードをかぶった魔王サマが振り返った。
部屋の中には、酒天童子とジークフリートもいた。
吸血族が寝ているベッドの横には、ブエルが立っていた。
どうやら、ブエルが聞き取りをしていたようだ。
吸血族は、私達を見て驚いたように声をあげた。
「ヴラド様!? ほ、ほかのもの達は無事ですか? エリザベート様は?」
「皆は……」
ヴラドが言いかけるのを手で制し、私は吸血族に答えた。
「エディール草の花粉を吸い込んで意識を失ったところに、魔物が襲ってきたらしい」
「では……!」
吸血族が両手で顔をおおう。
「私も質問していい?」
ブエルに確認すると、怪訝そうな顔をしながらも場所を譲ってくれた。
「ねぇ、なんであんたは魔王サマのお城まできたの?」
「それは、ヴラド様に知らせようと……」
「んー、言い方が悪かったか」
私は、ベッドに横たわる吸血族を見下ろした。
猫達がベッドの上に飛び乗る。
……寝るなよ?
「なんで、あんただけエディール草の花粉を吸わなかった?」
「……」
「ほかの人達は、意識を失ってから魔物に襲われていた。……意識のあったあんたは、誰に襲われた?」




