魔力喰い。
「にゃ!」
福助が「風魔法」で魔物達を吹き飛ばす。
私も大鎌を振って、魔物を切り裂いた。
それにしても、ずいぶん数が多いな。
「……血にひかれたのでしょう」
そう呟くヴラドはいつもの丸眼鏡を外して、赤い目をしていた。
吸血族の魔力は血に宿っている。
気配なのか匂いなのかは分からないが、魔力の宿った血が大量に流れ出たせいで、魔物が集まってきているようだった。
いや、違う。これは、多分……。
「にゃあ!」
上空を見上げて、せりが鋭い声で鳴いた。
「気配察知」か!
風に乗って、生臭いような匂いがしてきた。
巨大な黒い影が、すっぽりと私達をおおった。
「……ドラゴン?」
コハクやジークフリートよりも、さらに巨大なドラゴンが上空を旋回している。
ぬめったような鱗。
どんよりと濁った目。
今まで私が見てきたドラゴンとは、様子が違っていた。
「あれは、〈魔力喰い〉です」
「何、それ?」
ヴラドの話によると、自分の容量を超えた魔力を喰らい、正気を失ったものをそう呼ぶのだそうだ。
異常な強さだが、常に飢えており、体が限界を迎えてもさらに喰らおうとするらしい。
「ピィー!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「りゅうたろう、コハク!」
エディール草の花粉に気づき、いったん離脱していたりゅうたろう達が戻ってきたのだ。
襲いかかってくるドラゴンから、コハクが素早く身をかわす。
そのまま、垂直に上に飛んだ。
ドラゴンもついていこうとしていたが、コハクの方が早い。
そのコハクの背から、ひらりとりゅうたろうが飛び降りる。
空中で大きさを変えたりゅうたろうは、ドラゴンの首に噛みついた。
体を捻るようにしながら、そのまま地上に降りてきた。
ずしんっと地面が揺れ、りゅうたろうがドラゴンをぺっと吐き出す。
ドラゴンの首は変な方向にねじ曲がっていた。
「〈魔力喰い〉を一撃ですか…」
半ば呆れたような口ぶりで、ヴラドが呟いた。
んー? こんなのまで出てくるということは。
魔物達は血にひかれて集まってきただけではなく、おそらくここまでお膳立てされていたのだろう。
吸血族を襲ったのだから、狙いはおそらくヴラドだ。
それと、多分。
魔物達を全滅させると、ヴラドは急いで一族の元へと駆け寄った。
ヴラドの姿を見ると彼らは身を起こそうとしたが、ドライアドの薬師に止められていた。
「ヴラド様、申し訳ございません」
「エリザベートは? 誰が連れ去った? 傷はなかったか?」
「フードをかぶっていたので、顔は見ていません」
やはり、フードをかぶっていた連中が関係しているようだ。
「…………」
そして、おそらくあいつもだ。




