そういえば。
「くっ……」
大鎌で、小型の魔物を切り裂いた。
鎌を振るたびに、深紅の刃から炎が舞い上がる。
私も表世界で何度も魔物と戦い、それなりに倒せるようにはなったが。
魔物達の狙いは、血を流して倒れている魔族達だ。
くぅ達の攻撃をどうにかしてすり抜けてこようとする。
「にゃあ!」
せりの声に振り向くと、ドライアドの薬師がぐったりとした様子で座り込んでいた。
「大丈夫!?」
駆け寄ると、薬師は顔をあげた。
緑色だった髪が、わずかに黄色がかっている。
力を使い果たしたのか?
「傷の治りが悪くて……」
「まさか、エディール草のせい?」
私の言葉に、薬師は小さく首を振った。
吸血族は、血に魔力が流れている。
その血が大量に流れ出たため、ひどく弱っており、通常より傷の治りが遅いという話だった。
「私の魔力も、もう……」
薬師は自分の腕を見ながら、悔しそうに呟いた。
蔓に咲いていた花は全て枯れ落ちている。
「チャビ、『回復』……」
「うあぁぁぁおぅぅぅ!」
振り返ると、チャビは水牛のような角を生やした巨大な魔物を前に、目をらんらんとさせていた。
「……」
あかん、魔王スイッチが入っていらっしゃる……。
普段はおっとり癒し系のチャビだが、そこはやはりくぅの姉弟猫というべきか。
たまに、魔王モードに突入する事があるのだ。
今回は薬師が同行していたから、回復役は必要ないと思ったようだ。
あれに声をかけるのは、さすがにムリだ。
近づいてこようとする魔物に、よつばが前足ですぱんっと一撃をかましている。
「……」
んー? そういえば、ドライアドって、植物系の魔族だよな……。
私は無限収納から赤いブリキのじょうろを取り出した。
魔道具で、魔力を込めると半永久的に水が出てくる代物だ。
以前、よつばに魔力を込めてもらった水をかけた作物が異常な早さで成長した。
「せり、よつば。これに魔力を入れて!」
「にゃあ!」
せりがじょうろに体をこすりつけ、よつばは前足でたしたしと叩いた。
私の足元をすり抜けようとした魔物に、大鎌の柄で一撃をくらわす。
「邪魔するな!」
「にあん!」
よつば達が私に向かって、誇らしげな顔をしてみせる。
魔力が満タンになったようだ。
私はじょうろを、薬師の頭の上にかざした。
「あの……?」
「ごめん! でも、多分これで回復するから」
さあっとじょうろから水が流れ、薬師の髪に小さな虹がかかる。
それと同時に黄色がかっていた薬師の髪が、新緑のような色に変わっていく。
ぽぽぽんっと、まるで冗談のような勢いで蔓には満開の花が咲いた。
「これなら……!」
薬師が顔を輝かせる。
蔓を伸ばして傷を癒すが、はらはらと花びらが落ちていくと同時に、また新しい花が咲いていく。
よし、これで怪我人の治療のことは考えなくていい。
私は、大鎌をかまえ直した。




