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食べないで!

波の間に、銀色に光る鱗が見えた。


くすくすと笑う、鈴のような声。


美しい女性達の下半身は魚の姿をしていた。


やはり、人魚だったか。


歌声で惑わせ、海の底へ引きずり込もうとしたところをみると、セイレーンのような存在なのだろう。


んー。


人魚の歌声は猫には効果がないようだから、まぁ、大丈夫だろう。


いや、くぅの反応を見る限り、どちらかといえば猫には不愉快なもののようだ。


りゅうたろうも、鼻の頭にシワを寄せて人魚を見ていた。


「にあん! にあん!?」


茶色と白の、ふわふわの毛の長い猫が興奮した様子で船のへさきに張り付いている。


よつば、あんた、まさか……。


目の色が変わっている。


元捨て猫だったよつばは、異常に食い意地が張っている。


そして、美味しいものに目がない。


……美味しいのか、そうか。


だが。


「やめなさい、よつば!」


今にも飛びかかろうとするよつばを押さえつける。


いくら下半身が魚とはいえ、上半身は女性の姿をしている。


グロい! エグい! 見たくない!!


人魚達は面白そうに、私達を眺めている。


アホか、お前ら! 生存本能はどうなっているんだ!?


よつばのスキルは「解除」「魅了」「まな板の上」。


食べる、と決めたら確実に仕留められるスキルなのだ。


ドラゴンであるコハクが無事でいられたのは、ただ単に美味しくないからだ。


「やめなさいってば!」


ふかふかもふもふの愛らしい姿に騙されてはいけない。


捕まったら最後だ!(人魚が!)


「逃げろ、ばか!」


どうにかよつばを押さえつけながら、人魚に向かって叫ぶ。


「食べられたいのか!?」


人魚達が困惑したような表情を浮かべた。


今まで、船乗り達の命を奪う事はあっても、自分達が命の危機に直面した事はないようだ。


「福助!」


私の呼ぶ声に、凛々しい顔つきとちょっぴり出たお腹の持ち主の黒猫が、ぴくりと耳を動かした。


「『風魔法』! 人魚を吹き飛ばせ!」


「にゃ!」


福助が張り切って鳴いた。


福助の回りを、きらきらしたものが踊るように跳ね回った。


福助と契約している風の精霊達だ。


常に全力な福助が使えるのは「風魔法」だけで、しかも出力の加減は不可能だ。


しかし、風の精霊と契約した事で「風魔法」の形をコントロール出来るようになり、攻撃から守備まで幅広くこなせる。


「吹き飛ばす」のはシンプルなので、福助がもっとも得意とするものだ。


ごおごおと激しい風が巻き起こり、海の水ごと人魚達を空高くへと吹き飛ばした。


びちびちと暴れる人魚の下半身に、網にかかった魚が思い起こされた。


いかん、私もよつばに毒されているぞ、これは。


「にあん!」


「ぐえっ!」


結果として、人魚に逃げられたよつばが、押さえつけていた私のみぞおちを蹴って甲板の上に飛び降りた。


あんた、絶対にわざとでしょう、それ!?


諦めきれないのか、よつばは人魚が吹き飛ばされていった方角を眺めている。


しょんぼりとした様子で、ちらりと私の方を振り返った。


いや、騙されないからね?


人魚は食べない!


分かりましたか!?















































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