事件。
私達は、しばらくの間魔王サマのお城に滞在することになった。
海神様から紹介された大事なお客様、ということで、まるでお姫様のような部屋に案内された。
あ? 誰だ、その歳でお姫様なんて図々しいとかぬかしたやつは?
猫達に暴れさせるぞ、こら。
……いや、うん、そうなんだよな。
そんな立派な部屋は私が落ち着かない、というだけではなく。
猫達が部屋をめちゃくちゃにしかねない、という不安があった。
天蓋つきのベッドなど、あのひらひらに猫達が興奮してびりびりにしかねないし。
高そうな調度品も、絶対棚から落とすし。
はい、無理です。
というわけで。
許可をもらって門庭にテントを張り、私達はそこで過ごすことにした。
あー、くつろぐ。
猫達は、といえば。
魔王サマのお城の庭を冒険しているようだった。
何かしでかさないかとはらはらしていたが、どうも魔族の兵隊さん達と仲良くなったらしく、おこんや福助などは私の知らないところで遊んでもらっているらしい。
ただ、まぁ、相手も魔族なので。
遊び方は少々ハードなようだ。
昨日は、何があったのかは知らないが、福助の「風魔法」で何人か吹き飛ばされていた。
ちなみに、まだ戻ってきていない。
「ん?」
ぴくっとせりが顔をあげた。
外の様子をうかがっている。
「にゃあ!」
せりが鳴いた。
「気配察知」か。
せりの様子から、危険ではないと判断してそのままテントの外に出る。
んー? 特に変わった様子は……。
門庭の転移用の魔方陣が光った。
そこに姿を現したのは、血まみれの魔族だった。
立つ事も出来ないようだったが、這いずるようにしてお城へ向かおうとしている。
警備を担当する兵隊さん達が駆けつけてきた。
「チャビ、来て!」
チャビを呼んで、私も血まみれの魔族の元に駆け寄る。
「ヴラド、様に……、早く……」
うめくように言いながら、魔族は前に進もうとしている。
「チャビ、『回復』して!」
チャビがごろごろとのどを鳴らしながら、魔族の側に寄り添った。
傷がみるみる内に癒えていく。
あ、いかん! このままだと寝てしまう!
「何があったの?」
魔族が寝てしまう前に、と慌ててたずねる。
うつらうつらとしながら、魔族がどうにか口にしたのは。
「エリザベートさま、が……、さらわ……れ、た……」
「!」
フードをかぶった連中か!
だが、今回は怪我人が、しかも命に関わるような怪我人が出ている。
今までとは、やり口が違う。
豪華客船の事が関係しているのか? それとも、やつらに何かが起きたのか……?




