治った……?
「よつば、『解除』」
私の言葉を聞き、よつばが鼻の頭にしわを寄せた。不機嫌そうに、ふさふさのしっぽを振っている。
「どうしたの?」
まさか、「解除」できないのか?
女神様の結界すら「解除」したよつばが?
いや、確か前にもあったな。
あれは、私が〈古代神語〉を覚える前で、その〈古代神語〉によるものは「解除」出来なかった。
人間の使う言語によるものは、テイマーである私の知識を共有しているらしいのだ。
つまり、この呪いは私の知らないナニかということか?
んー、そういえば豪華客船の連中と言葉を交わした時に、妙な違和感があったような……?
よつばが前足をちょいちょいと動かした。
だが、魔王サマのネコミミもしっぽもそのままだった。
やはり、ダメか……。
そう思っていると、魔王サマが大きな声で叫んだ。
「治った! 治ったぞ!」
喜びの声をあげる魔王サマは、ぴーんとしっぽをたてていた。
いや、治ってないから、それ……。
ん? 語尾にニャがついていない!?
「普通に話せる!」
どうやら、魔王サマにとって一番問題だったのはニャだったらしい。
まぁ、ネコミミとしっぽはそれなりに隠せるからなぁ……。
よつばがふてくされたように、しっぽを振っている。
完全に「解除」出来なかったことに、プライドが傷ついているようだ。
「いいこ、いいこ。ご褒美に、あとでおやつをあげるからね」
「……にあん」
よしよしと頭を撫でると、よつばはそっぽを向いたまま小さく鳴いた。
「……よかったですね」
どう見てもがっかりしているような表情で、ヴラドが魔王サマに声をかける。
……少しは喜んでやれよ。
まぁ、いい。
今はそれよりも、豪華客船について話をする方が先だ。
「呪いをかけた連中に、心当たりがあります」
私が言うと、魔王サマをはじめ、広間にいたもの達の顔に緊張の色が浮かんだ。
「それは本当か?」
「確信はないですけど」
そう前置きして、ルビー共和国での出来事を話した。
妙な豪華客船にコハクが捕まったこと。
その船には人魚や獣人が大勢囚われていたこと。
そして、くぅが魔王サマに間違われたこと。
話を聞き終わると、ライオンの獣人さんはぐるると低くうなった。
ライオンさんはルビー共和国から派遣されている軍人で、ブエルと名乗った。
「確かに、最近国内で行方不明者が多数出ていると聞いている」
「私達、小人族もそうです」
赤いドレスの女性、サファイア王国の第十三王女リリスもそう言った。
二人の言葉を聞き、ヴラドが眉をひそめる。
「魔王領エメラルドでも、行方不明者が出ていると報告があがっています」
魔族が? いや、薬師であるドライアドのように戦闘向きではない種族もいるのか。
「俺らんとこは、聞かねぇな。ジークフリートのじいさん、あんたんとこは?」
酒天童子の問いかけに、竜人さんが小さく首を振った。
「聞かヌな。元々、我らはあまりつるまヌゆえ、話題になっていないだけかもしらヌが」
やはり、鬼族と竜人族は連中に捕まっていないのか……。




