魔王の呪い。
フードをかぶった魔王サマが手をあげると、さっと素早く兵隊や侍女が退出した。
だが、酒天童子や軍服を着たライオンさん達は広間に残ったままだ。
「彼らは、魔王様の事情をご存知です」
丸眼鏡によると、酒天童子や竜人は自分達の一族に伝わる呪いを調べたり、獣人達は細工の得意な小人族と組んで呪いの痕跡がないかを調査していたらしい。
だが、なんの手がかりもなく、人前に出られなくなった魔王サマは重い病気にかかって声を出せなくなった、と説明しているのだそうだ。
「ドライアドである彼女には、薬師として来てもらっています」
緑色の髪の女の子が、にっこりと笑った。
ドライアドは植物系の魔族だったはずだ。
一応、自分達でどうにかしようとは思ったわけか。
まぁ、確かにいきなり海神様に泣きつくはずもないしな。
「ですが、八方塞がりでして……」
それで、私達に話がきたのか。
考え込んでいると、魔王サマが玉座から立ち上がり、私の前にやってきた。
……思っていたより大きいな。私の倍くらい身長がある。
がばっと魔王サマが頭を下げる。
「頼むニャ! どうか、この呪いを解いてほしいニャ!」
…………ん?
勢いよく頭を下げたせいで、かぶっていたフードが外れ、魔王サマの顔が見えた。
浅黒い肌に銀色の髪。頭の両サイドに、くるりと巻いた黒い角が生えている。
ダンディーなおじ様、といった感じだ。
だが。
頭のてっぺんにぴょこんっと一対の黒いネコミミがついて、それがぴくぴくと動いている。
目の端で何か動いたような気がして、そちらを見たら立派なマントの裾からしょんぼりと垂れた黒いしっぽがあった。
んんー?
「もう、これ以上耐えられないニャ! 助けてほしいニャ!」
…………。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
いや、待て。情報過多で処理が追いつかない!
なんだ、そのネコミミとしっぽは!
獣人なのか? そうなのか!?
いや、違う。魔王サマは魔族のはずだ。
「なんでもするニャ! だから、この呪いを解いてくれニャ!」
渋い声で、語尾にニャをつけるな!
耳が混乱する!
大体、語尾にニャが許されるのは美少女系ネコミミ娘だけでしょうが!
って、落ち着け、自分! だいぶパニクっているぞ!
「お気の毒に。魔王様は呪いで、このようなお姿に……、く、ふ……」
丸眼鏡。あんた、肩を震わせているけど、それ、笑いをこらえているだけだよな……?
酒天童子はニヤニヤしているし、年配の竜人は気の毒そうな目で魔王サマを見ている。
小人の女性とドライアドの薬師はにこにこしているが、あれは多分猫カフェにいるお客さんと同じ顔だ。
ライオンの獣人さんは、困惑したようにゆらゆらとしっぽを振っている。
……もしかして、アレか。
海神様が私達に依頼してきたのは、猫だからか? そうなんだな!?




