謁見。
城の中の長い廊下を過ぎると、重々しい扉が開かれた。
大きなガラス窓を背にした玉座があり、そこには黒いフードをかぶった男が座っていた。
「海神様よりご紹介いただいた相田つかさ様と、ネコチャン様達です」
「……」
黒い翼の生えた、丸眼鏡をかけた男の言葉に、フードの男が片手をあげた。
……ほーお、魔王サマは下々のものとは口もききたくないと?
だいたい、海神様からの紹介の客がきたというのに、フードをかぶったままってどういうことだよ。
本当に、フードをかぶっているやつに、ろくなやつはいな……。
いや、まぁ、私もかぶったままだけどな。
フードをかぶった魔王サマと、フードをかぶった客人が謁見しているというビミョーな状況になっている。
仕方ない。ここは、こっちが折れてやりますか。
私はフードを外し、ぺこりと頭を下げた。
「相田つかさです」
フードをかぶったままの魔王サマに、膝なんかついてやらないがな。
「お前、人間か!?」
背後から聞こえてきた声に振り向くと、角の生えた和服姿の若い男が私を見て目を丸くしていた。
角といっても魔族さん達とは違い、頭のてっぺんに短いものが生えている。
もしかして、鬼、なのか?
「それに、黒髪に黒い目っていうことは、俺達の同郷か?」
同郷というのが「あの国」をさしているのか、それとも表世界の真珠国をさしているのか。
さて、どちらだ? と一瞬悩んでいると、丸眼鏡が鬼さんに声をかけた。
「酒天童子。そのような事は、あとにして下さい」
「あ、すまねぇ。つい……」
酒天童子……?
それって確か、「あの国」で一番有名な人食い鬼の名前だよな? そうだよな!?
まさか、鬼が犯人……?
ちらりと酒天童子を見ると、にこにこしながら手を振ってきた。
なんというか、ノーテンキな顔してるな、君……。
「では、早速ですが、海神様から依頼の内容はお聞きになっていますか?」
丸眼鏡が回りくどい言い方で、私に確認してきた。
おそらく、魔王サマが呪われている事を知られたくない人物がこの場にいるのだろう。
私は、素早く周囲を確認した。
呑気そうな顔をしている酒天童子。
軍服を着た、ふさふさのたてがみを持つライオンの獣人。
猫くらいの大きさの、赤いドレスを着た女性。
顔の半分が鱗でおおわれた、ドラゴンの翼を持つ年配の男性。
両手に薔薇のような花と蔓をからませた、緑色の髪の若い女の子。
ほかに、魔族の兵隊や侍女が部屋のすみに控えている。
んー、ダメだ、人数が多すぎる。
関係者がいたとしても、これでは絞り込めない。
仕方ない。とっとと魔王サマの呪いをとくとするか。
「人払いをお願いできますか」
犯人探しは、あとでじっくりやりますかね。




