魔王の城へ。
すっと一人が前に進み出てきた。
右手を自分の左肩に当てる。
おそらく、魔族の敬礼なのだろう。
「失礼しました。もしかして、魔王様にお会いになるために来られた方でしょうか?」
「はい。海神様の依頼で来ました」
私の答えを聞き、後ろに控えていた全員が右手を自分の左肩に当てた。
「お待ちしておりました!」
私達のやり取りを見て、魔族さんがぽかんとしている。
隣に座っている福助に、こっそりと話しかけた。
「お前さん達の飼い主って、やっぱりスゴい人だったのか……?」
いや、スゴいのは猫達であってね。
私はおまけというか、下僕というか……。
まぁ、一応はテイマーなのだが。
たまに……、いや、けっこう言うこときかないけどな!!
「我々と同行なさいますか?」
んー、キングの「空間転移」で行くか。
街の中を通りたかったのは、情報収集のためだしな。
お城の兵隊さんに会った以上、速やかに魔王の元に向かった方がいいだろう。
魔族さんのおかげで、多少は話を聞けたし。
「転移魔法は使っても大丈夫ですか?」
「はい。城に直接転移は出来ませんが、門庭に専用の場所がありますので」
つまり、転移用のヘリポートみたいなものがあるのか。
お城に直接転移出来ないのは、侵入者対策だろう。
……よつばとキングがいれば、どこでも行けるだろうけどな。
その前に。
私は魔族さんにぺこりと頭を下げた。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
よつばだけではなく、私や猫達もコハクもたくさん食べてしまった。
……まだまだ、たくさん実はつけているが。
「いやいや。あんた達がいなければ、
フラーにやられていたし」
ありがとう、と魔族さんはにっこりと笑った。
「よかったら、少し持っていってくれ」
「にあん!」
私が答えるより先に、よつばが大きな声で鳴いた。
よほど、気に入ったらしい。
まぁ、人魚よりずっといいけどな……。
魔族さんの言葉に、ありがたく実を収穫させてもらう。
兵隊さん達も手伝ってくれた。
「うまっ!」
「すげぇ! こんなの初めて食った!」
何人かは、つやつやのオレンジ色の実に我慢出来ずにかぶりついているのもいたようだが。
魔族さんに「食べてもいいか?」と許可は取っていたようだから、かまわないだろう。
鎧の下の素顔は魔族さんと同じ赤褐色の肌だったが、角の形や色は違うものもいた。
収穫した実を無限収納に入れ、改めて魔族さんに挨拶をした。
「ありがとうございました」
「こちらこそ。なんか、魔王様も大変みたいだから、力になってやってくれ」
「はい」
魔王は、どうやら庶民にも慕われているようだ。
お城の兵隊さん達も、どこか呑気な感じがするし。
魔王は、悪い人(?)ではなさそうだ。
「……」
やはり、呪いというのはあの豪華客船に関係があるのだろうか。
密輸? 密猟? 人身売買?
何が正解にしろ、ろくな相手ではないだろう。
さて、観光気分はここまでだな。
「りゅうたろう、行くよ」
手のひらサイズのりゅうたろうが、ひらりと私の肩に飛び乗った。
「キング、『空間転移』」
魔王の城へ!




