猫を連れた冒険者。
「え、お肉は食べないんですか?」
「子供の頃に一度だけ食べたけど、気持ち悪くなってなぁ」
魔族さんに話を聞いていたが、普通の魔族は肉食ではないという事だった。
このオレンジ色の実のように魔力を込めて育てた魔作物でないと、魔族に必要な栄養が取れないらしい。
だとすると、人魚達を捕らえていたのは魔族とは関係ないのか?
「魔王様に仕えているような強い魔族だと、肉を食べるやつもいるみたいだけどな」
んー?
魔王に仕えているという事は、強くてそれなりに権力もあるという事だろうし、まだ可能性は捨てきれないか。
いや、魔王にかけられた呪いが関係あるとすれば、直に仕えているやつの方が可能性が高いかもしれない。
ふと、北の空から黒い影が近付いてきた。
フラーか!? と一瞬身構えたが、せりが反応していない。
それどころか、適度な運動のあとにおなか一杯になったせりは、私の膝の上で丸くなって眠ろうとしている。
「あれは、お城の兵隊さんだな」
フラーの事が報告にあがって様子を見に来たんだろう、と魔族さんが笑った。
ヤバい、逃げないと……。
私は慌てて立ち上がりかけ、ふと思い直した。
いや、逃げなくていいのか。
海神様から、魔王には私達が行くことを伝えておいたと言われているしな。
いかん、すっかり逃げグセがついている……。
黒い影が複数降りてきた。
全員黒い鎧を身につけ、それぞれ槍や弓矢などで武装している。
乗っていたのは、ドラゴンというより羽の生えたトカゲに近い。
大きさはだいぶ違うが、城塞都市オニキスで見たフライリザードに似ている。
そういや、あの唐揚げ、美味しかったな……。
「フラーの目撃情報があったのだが」
「ここには来ていないのか?」
「いや、来たんだけどな」
ほら、あれ。と魔族さんが山盛りになったフラーを指差した。
「…………」
そちらに視線を向けた兵隊さん達が、一瞬無言になる。
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
いや、だから、びっくりするって言っているでしょうが!
ていうか、魔族ってみんな同じ驚きかたをするのか?
とりあえず、くぅは爪をしまいなさい。
「え? え? え?」
「これ、全部フラーか……?」
「まさか、あんたが?」
「いやいや。あそこの猫達らしいよ」
混乱している兵隊さん達に、魔族さんが笑って答えた。
全員の視線が、私と猫達に向けられる。
やはり、逃げておくべきだったか……。
「猫……?」
「そういや、魔王様が『猫を連れた冒険者』が来るって言ってなかったか?」
「ああ。そういや、そんな話をしていたな」
懐かしい呼ばれかただ。
表世界では、竜殺しだの神殺しだの物騒な名前で呼ばれているしなぁ……。
やったのは猫達であって、私ではないというのに。
大体、運命神だって死んではいないのだから、神殺しというのは間違っている。
竜は……、まぁ、あれだ、うん。




