緑の手?
……ヒマだなぁ。
ため息をついていると、ふと荒らされた畑が目に入った。
んー?
植え直すくらいは、してもいいよな?
私は、農耕神様からも加護をもらっている。きちんと手を入れてさえいれば、必ず豊作になるのだ。
「よし!」
無限収納から小さなシャベルと軍手を取り出した。
荒らされた苗?らしきものを、一つずつ丁寧に植え直す。
緑色の葉に、赤いストライプ状の細い線が入っている。
「よつば、これって美味しくなるのかな?」
よつばが、私が植え直した苗の匂いをふんふんと嗅いだ。
ぴんっとふわふわのしっぽを立てる。
「にあん!」
そうか、美味しいのか。……ちょっと食べてみたいな。
赤いブリキ製のじょうろを取り出す。
レトロな感じに一目惚れして買ってしまったが、魔力さえ込めれば半永久的に水が出てくるという、れっきとした魔道具なのだ。
「よつば、ちょっと魔力分けて」
「にあん!」
よつばがぽすぽすと、前足でじょうろを叩いた。
水をあげると、しんなりしていた葉っぱがしゃきっと立ち上がった。
「よーし、ぐんぐん育てよー」
私の言葉に応えるように、みるみるうちに茎が伸び、葉が大きくなっていく。
ぐんぐん、ぐんぐん、ぐんぐん……。
ん、んんー?
伸びすぎだろ、これ……。
農耕神様の加護のおかげなのか、それとも、よつばのスキルである「まな板の上」の影響なのか。
あっという間に、私の背丈くらいまで伸び、つぼみが膨らみ、白い大きな花が咲いた。
え、えーと……?
ぽかんとしていると、ハート型のオレンジ色の大きな実をたわわにつけた。
あー、うん。裏世界の植物だしな。
これがフツーなんだろう。そういう事にしておこう、ね、よつば?
「にあん! にあん!」
よつばがオレンジ色の実に前足を伸ばす。
「こら、勝手に人のものを採ったらダメでしょ」
魔族の人が起きたら、分けてもらおう。
そう言ってよつばをなだめていると、どんっと背中に衝撃を感じた。
フラーを狩り尽くしたりゅうたろうが、通常サイズのまま私の肩に乗ろうとして背中を踏みつけたのだ。
「お帰り、りゅうたろう」
出来れば、手のひらサイズでお願いします……。
くぅ達が満足そうな表情を浮かべながら、ぞろぞろと戻ってきた。
フラーが、こんもりと幾つかの山になって積み上がっている。
「お疲れ様」
そろそろ魔族の人も、目を覚ますだろう。
私はフードをかぶり直した。




