災いを呼ぶ鳥。
道を進んでいくと、畑らしきものが見えてきた。
やはり、村があるらしい。
しかし、あの白に黄色の斑点のある葉っぱは病気ではないんだよな? ああいう植物なんだよな?
異世界の作物にもだいぶ慣れてきたつもりだったが、裏世界はさらに不思議なものでいっぱいだ。
んー、あれもよその世界から入ってきたものなのか?
この世界は、ほかの色々な世界から人や動物、植物なども流れ込んでくる。
何百年、何千年も前からそうらしく、多種多様な生態系が出来上がっているのだ。多分、掛け合わせてこの世界オリジナルになっているものもあるだろう。
せりが不意にキャットハウスから顔を出した。
「にゃあ!」
空を見上げながら、鋭い声で鳴いた。
「気配察知」か!
東側の空が、黒い何かで覆われている。次第に近付いてきている。
目をこらすと、先行している幾つかの姿が確認できた。
羽毛は青く、尾羽の先だけが白い。
あれは……。
「フラーか!」
表世界でも何度か遭遇した〈災いを呼ぶ鳥〉だ。
家畜も作物も人も、目に入るもの全てを食べ尽くす巨大な鳥の群れだ。
数十年前に襲われたというオパール王国では、最終的に農耕神様や猫神であるミーコさんが介入して、ようやく悲劇が終わったという話だった。
裏世界にもいたのか? いや、元々は裏世界の生物だったのか?
まさか、渡り鳥……?
世界の果てを越えられるなら、なくもない話だ。
「!」
悲鳴が聞こえた。
先行していたフラーが降りてきたのか!
「りゅうたろう、大きくなって!」
ひらりと肩から飛び降りたりゅうたろうは、地面につく前に虎ほどの大きさに姿を変えた。
「行くよ!」
悲鳴が聞こえてきた方向へ走る。
襲われていた人は赤褐色の肌で、頭には黒い角が生えていた。
魔族だ。
「みんな、出てきて!」
キャットハウスから、猫達を呼び出す。
おこんがわくわくしたように、空を見上げている。福助はぶんぶんと勢いよくしっぽを振っていた。
〈災いを呼ぶ鳥〉。
だが。
「好きにやっていいよ」
キングが魔族を襲っているフラーへと、早速飛びかかった。
ほかの猫達も、近付いてくるフラーの群れへ向かって走り出した。
〈災いを呼ぶ鳥〉といえども、うちの猫にとってはただの鳥なのだ。スキルを使うまでもない。
「チャビは、その前に『回復』していって」
怪我をしている魔族の人に、チャビはごろごろとのどを鳴らしながら体をこすりつけた。
地面にブルーシートを敷き、さらにその上にふかふかのラグを敷く。
眠ってしまった魔族の人をそこに寝かせると、私のやる事は終わりだ。
膝を抱えながら、猫達の狩りを眺める。
「ヒマだねぇ……」
私の隣に座ってあくびをしているよつばを撫でながら、小さく呟いた。
よつばは、食べられないものには一切興味がない。徹底している。
よって、毎回フラーの狩りには参加せず、ほかのものを狩っていたのだが畑のど真ん中では狩るものが見つからない。
ラグの上で、よつばは丸くなって眠る体勢に入った。
私も、昼寝でもしようかな……。




