#023 ルルネ様、決闘する
【決闘の申請を受諾しました。15秒のカウントダウンの後、決闘が開始されます】
【決闘エリアが生成されました】
【チャット、コメント機能を一時閉鎖します】
【エリア内のプレイヤーステータスを平均化します】
………
3…
2…
1…
……0
【決闘が開始されます】
―――――
システムの決闘開始のアナウンスがされた。
オメガ君との間合いは距離にして約5mといったところだろう。
リムロ大橋で狼相手に猛威を振るっていた明らかにレア装備であろう片手剣。
頭以外を余すことなく覆う白銀の全身鎧と、仄かに発光する盾。
むぅ…。
我の装備だって一級品なのじゃが、それでも向こうの装備は最前線級のものなのは間違いない。
それと比べると私の装備は『破邪ノ月爪斧《壱式》』と若草シリーズの防具。
武器の面では心核装備である 『破邪ノ月爪斧《壱式》』のが多分あの光る剣よりも上だろうけど、防具はそうはいかない。
白玉さんという一級の職人が作った装備とはいえ、若草シリーズはあくまでもレベル12の頃に入手した最適装備。
オメガ君の装備はレベル44帯の最適防具だろう。
ひん……。
誰だよぅ、フル装備で良いとか言った奴はぁ……。
こちらの恨めしげな視線に気がついたのか、オメガ君は笑みを浮かべると、こちらに向けて盾を掲げてみせた。
「ではルルネ君、お先にどうぞ?」
むっっぎいぃ!
やっちゃるかならぁ!
余裕の表情でキザなセリフを吐くオメガ君の泣きっ面を見るのが、今から楽しみじゃなぁ!
「……くくくっ、やはり人間は愚かな生き物じゃのう」
装備品の差はあれども、正直この決闘は私が有利だ。
オメガ君は装備や戦い方を見るからに、典型的な重装備タイプのタンクの育成をしているはずだ。
タンクは敵の攻撃を一手に引き付けるために、ステータスの殆どをDEFに割り振っている。
また、タンクの装備は自慢の防御力を高めるために、硬く重い金属鎧などの装備が選ばれると攻略サイトに書いてあった。
オメガ君が身に付けている白銀の鎧もそのタイプと見た!
つ・ま・り!
その動きは鈍重!
見切るのは容易いのじゃ!
それに通常の戦闘では高レベルのDEFステータスに阻まれるかもしれないけど、決闘ルールによってオメガ君は私と同じレベルまで弱体化している。
火力特化ステータスの私のステータスであればダメージだって通るはず。
うむ!
勝利の方程式は成った!
いける!
この戦い、勝てるのじゃ!!!
勝敗とは戦いの前に既に決しているものなのじゃ。
くくくっ、やはり人間と真祖ではそもそも頭の出来が違うのじゃよなぁ!
私は手にした斧を下段に構え、脚に力を込める。
オメガ君の自慢の防御を正面から叩き潰してやるのじゃ!
思い切り地面を踏みしめ、一息にオメガ君との距離を詰めると、渾身の力を込めてオメガ君の眼前に構える盾に目掛けて振り下ろした。
「――痛っったいのじゃあぁぁッ!?」
激突の瞬間、斧を握る手に走る痛みと痺れ。
まるでコンクリートで舗装された道路に向けて叩きつけているかのような感覚。
事実、その痛みはダメージと判定されたようで私のHPバーが僅かに減少していた。
慌てる私とは真逆に、微塵のダメージも感じていないように見えるオメガ君が、盾で私の斧を受け止めたままの体勢で微かに重心を下ろす。
「にょわあぁぁッ!?」
「……ほう」
無造作に構えられていたオメガ君の片手剣が、下段から上段に振り上げられ、私は慌てて上半身を反らしてその一撃を回避する。
は、速い!
重装備のタンク構成とは思えない速度の一撃。
何とか避けることができたが、見切るのが少しでも遅れていたら勝負はついていただろう。
重装備タンクは動きが鈍重なんじゃないのかよぉ!
私は慌てて斧を引き戻すと、バックステップでオメガ君との間合いを離した。
な、何だかよく分かんないけどまずい!
私の一撃を防ぐほどの防御にステータスを割り振りながらも、決闘システムによって平均化されたステータスであの速度と両立できる?
いや、装備品の性能がよほど高いのかな?
それとも何か特別なスキルか魔法?
ひ、ひとまずオメガ君の間合いの外にいる間に体勢を立て直さなきゃ!
次の作戦を練る時間を稼ぐためにも、オメガ君から目線は外さずにジリジリと後退する。
「す、すす、す少しはやるようじゃな!」
「君の方こそ、予想をはるかに上回る才能だ。……だからこそ、俺の真の力をお見せするとしよう」
「ーー……ほへ?」
オメガ君が好戦的な笑みを深めると同時、手にした片手剣を取り巻く光のエフェクト、その光量が増す。
「【ヴァイスヴァール】!」
オメガ君が片手剣で、目の前の何もない空間を横一文字に薙いだ。
その剣の軌跡に合わせて、何倍にもなった大きさの光の奔流が生み出されると、私に向かって襲いかった。
まさに斬撃の射出とも言える一撃。
「ず、ずるっこじゃ!!」
慌てて何とか回避を試みるも、攻撃の軌跡こそ見切れたものの、周囲を埋め尽くすほどの光の奔流だ。
目が眩むどころの騒ぎではなく、そもそも逃げ場が無い。
「おのれえぇぇぇぇぇ~~ッッ!!!」
光に飲まれながら、私のHPバーは一瞬にして消し飛んでいった。
【勝者『オメガ』】
【決着につき、決闘モードを解除します】
お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。
引っ越し作業など、落ち着いてきましたので、ゆっくりにはなりますが投稿を再開していきたいと思います。
よろしければまたお付き合いくださると幸いです。




