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#002 ルルネ様、キャラメイクする ①



一瞬目の前が暗転すると、やがて光が差し込んできた。

霞む視界が少しずつ晴れていき、ゆっくりと周囲の状況を認識し始める。


そこは地平線も見えず、どこまでも続く真っ白な地面と、同じように果てしなく続く

雲ひとつ無い青空だけの空間。

目の前にはサッカーボールくらいの光る珠が浮かんでいる。


ふと自分の体を見下ろせば、現実と寸分変わらない自分の体がそこにはあった。

まぁ、体に関してはゲーム開始前にスキャンしているので、当たり前と言えば当たり前なのだけど。



「ほへぇ、すんごいなぁ……」


一昔前のVR技術とは異なり、最新鋭の技術と機材を使用した「ENO」は仮想空間でありながら現実と殆ど差異の無い世界を再現できる。

現実では絶対にあり得ない光景であるはずのに、感じる圧倒的なまでの現実感に思わずひとりごちてしまう。


VRはたまに授業等で使う為に使用するので、初めての使用ではないが、それはあくまで資料の一貫だ。

娯楽用として作られた空間、それも「その世界で生きる」ということに主軸をおかれた空間などは初めてだ。

そんな光景に圧倒されていると――



「はじめまして、旅人様」


目の前の珠が話しかけてきた。



「んむ、はじめましてじゃ!光たまっころよ!」


光る珠がしゃべろうとも私は動じない。

何故なら事前にゲームの導入は攻略サイトを覗いて確かめたから!


調べたところ、ゲーム開始直後は自分のキャラクターを作るチュートリアルステージに飛ばされるらしい。

ここがきっとそうなのだろう。


「私はチュートリアル用AI【セルン】。アカウント名確認――【藤堂舞】様、でよろしいでしょうか?」


「クククッ…!藤堂舞とは人間界での仮の名よ!我の真名は ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世!吸血鬼の真祖なのじゃ!」


「藤堂舞という名前ではないということでしょうか?」


「だ、だからちがくて、それは人間界の名前というか……」


「入力間違えということであれば公式サイトのお問い合わせフォームからアカウント変更手続きをお願いします」


「そういうのじゃなくてぇ……」


「また本ゲームの規約に基づき、アカウント登録時の偽名の使用は認められておりません。アカウント登録内容の変更か、お問い合わせをーー」


「ちがっ……」


「お名前の確認ですので、Ⅳ世という部分は必要ございません。日本では〇〇世のような部分までの名乗りが一般的ではないとおもわれます」


「…藤堂です…わたしは藤堂舞です……」


「また、ご自身が真祖ということでしたが、真祖は吸血鬼の上位種族でありチュートリアル時点では選択できません」


「……ひぐっ……えぐっ……」





―――――





「閑話休題じゃ!!!」


「まさか泣いてしまうとは……」


「それはもういいよぉ!」


泣いてない。

断じて泣いてないやい。

ちょっと鼻がツーンとしただけだし。


「それではキャラクターメイキングを開始します」


セルンがそう言うと、私の目の前に姿見が現れた。



「最初に選ぶのはキャラクターの種族です。ENOには人間だけではなく、エルフや獣人、ドワーフ等、様々な種族が―――「吸血鬼!!!!」



食い気味にそう言うと、姿見に写し出された私の体に変化が起こる。

具体的に言うと、背中に一対の蝙蝠のような小ぶりな翼が生えた。

口元から覗かせる犬歯も僅かに長くなっている。


『【種族:吸血鬼】になりました』

『【種族称号:眷属】を入手しました』

『【種族スキル:血魔法】を入手しました』

『【種族スキル:魔眼】を入手しました』

『【種族スキル:吸血】を入手しました』

『【種族特性:太陽・聖属性弱点】が付与されました』

『【種族特性:夜時ステータス微増】が付与されました』


アナウンスメッセージを聞き流しながら、姿見に映る自分の体を舐め回す様にして見つめる。


完璧!

ふふふ、ちょっと翼は小さいが、これでそ吸血鬼じゃ!満足満足。


「続いて外見のクリエイトを行います」


「むっちむちのばいんばいん!むっちむちのばいんばいんな吸血鬼が良いのじゃが!」


「身長や体型を大きく変化させると、操作時に違和感が生じる恐れがあります。また齟齬が大きくなるため、性別の変更はできません」


「むぅ……しかたないのぅ。体型はリアルの体そのままで構わぬ」


私の身長は平均的な高校一年女子と比べるとほんのちょ~~~~っぴりだけ小さい。

よく小学生に間違えられたりするけど、みんな目がおかしいんだ。


まぁセクシー系吸血鬼路線は諦めたが、この際吸血鬼になれるなら贅沢は言うまい。


気持ちを切り替えると、姿見横に浮かび上がったウィンドウに指を当てて操作する。


肩くらいまで伸ばしている黒髪は、思いきって腰くらいまである銀髪に変えてしまおう。髪型も普段はしないツインテールに変更。

PVに出てきた金髪吸血鬼ちゃんもツインテールだったし、まねっこしちゃえ。

続いて黒目の部分を血のような赤色に変更。うん、いい感じに吸血鬼らしくなってきた。

肌の色は少しだけ血色の悪そうな色白に。

あとは輪郭や目の大きさなど細かく変更できるみたいだけど、この辺りはそのままでいいかな。



うん!

いい感じ!

少しだけちんまい気もするけど、これならば誰がどう見ても吸血鬼だ。


キャラクターネームもついでに入力。


【ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世】


相変わらず惚れ惚れする美しい名前だ。

うん、もしかしたら重複して使えないかと思ったけど、その心配はなかったみたい。

色んなところで名乗ってるから、私の圧倒的ネーミングセンスにまねっこしてる人がいてもおかしくないはずなんだけど……。





―――――――





名前:【ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世】

種族:【吸血鬼】


【スキル】

◆血魔法(Lv:1)

◆魔眼(Lv:1)

◆吸血(LV:1)


【種族特性】

太陽・聖属性弱点

夜時ステータス微増


【種族称号】

◆【眷属】――『人を棄て、夜に生きるものとして歩み始めた者に与えられる称号。それは誰かに支配されるが故の眷属ではない。血を支配する吸血鬼ではなく、いまだ血に支配されるその未熟が故の眷属なのだ。

ゲームのキャラメイクが結局一番楽しい、みたいな感じ分かりません?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 事務対応してくるAIに泣かされるの結構新鮮&可愛くて好き。
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