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#017 ルルネ様、調薬をしてみる

「今日は【調薬】のスキルを上げていくのじゃ!―――で、調薬ってどうすれば良いのじゃ?」


『初手ポンコツで笑う』

『知らないんかいw』

『まずは初心者用調薬セットを買おう』


「……ふむ、初心者用調薬セット、なのじゃ?」


『初心者用の調薬セットなら始まりの街の道具屋で買えるよ』

『確か1000モルで売ってた気がする』


「うっ、けっこうお高いのじゃな…」


モルはENOにおける通貨の単位だ。

ちなみに現実に換算した1モルがいくらかは分からないけど、ゲームを始めた初期から持っているモルが1500モル。


もちろん素材なんかは持っているけど、換金なんてしてないから私の全財産はゲーム初期にもらった1500モルしかない。


うーん、調薬セットを買うと全財産の三分のニが無くなる計算になる。


ネームド素材あたりは売れば割とお金に余裕ができそうだけど、まだ素材で武器を作ってないから売っちゃうのもなぁ…。


ま、リーフラビットの素材もあと少し残ってるし、お金が無くなったらその時に考えればいいかな。

ひとまずは視聴者さんが教えてくれた道具屋さんに行ってみよう。





――――





始まりの街は冒険者相手のお店が数多く立ち並んでいる。


というか、規模などを考えなければ、始まりの街にあるお店の殆どが何らかの形で冒険者と関わりがあるらしい。


始まりの街自体が、冒険者のスタート地点ということもあって、この世界で冒険者が最も多く立ち寄る街だ。だからこそ冒険者相手の店が多く立ち並んでるのかもしれないね。


そんないくつもある冒険者相手の店の中でも、道具屋は非常に数多く立ち並んでいるように見える。


消耗品の需要の高さゆえ、といったところなのかなぁ。

プレイヤーが商いをしているお店も含めれば冒険者のための道具屋は100店近くあるかもしれない。


「ごめんくださーい、なのじゃ」


そんなことを考えながら始まりの街を歩いていると、ようやく目的地が見えてきた。

木造一軒家。表通りに向けて薬のフラスコのような器具と薬草と思われる葉っぱのイラストが絵描かれた看板が下げられている。店先にはセール品なのか、ロープやナイフ、火口箱、水袋、松明などのいわゆる「冒険者セット」がやや乱雑に並んでいるのが見える。


私は視聴者さんがオススメしてくれた、いかにもファンタジー世界の道具屋といった感じのお店の扉を開けた。


店内はこじんまりとしており、カウンターには店主と思われる優しそうなおじさんが座っている。 


「おや、お嬢ちゃん、こんにちは。おつかいかな?」

「お、おつかいではないのじゃ!――こほん、ここに初心者用調薬セットはあるかのう?」

「これは失礼しました。もちろんありますよ。1000モルになります」

「う、うむ。ではそれを貰うとするかのう」 

「ありがとうございます」



――――


【初心者用調薬セット】を入手しました。

初級調薬レシピが解放されました。

レシピは製作メニューから確認できます。


――――



現実でもそうだったけど、なんだかこのゲームを始めてから、より幼女扱いされることが増えた気がする。

う、嘘なんだよね?みんな冗談なんだよね?さすがに私そこまでちんまくないよね……?


「見たところ調薬の初心者さんみたいだし、良ければ調薬についてすこし説明しましょうか?」


自分の超絶ばいんばいんダイナマイトせくしーぼでぃを見下ろして佇んでいると、店主のおじさんが提案してくれた。


「んむ、お願いするのじゃ」

「かしこまりました。【調薬】スキルは文字通り、様々な薬を製作できるスキルです。回復用ポーションは勿論、レシピが解放されればその他の効果を持つ薬も作れるようになります」

「ふむ、レシピはどのようにしたら解放されるのじゃ?」

「そうですね、方法はいくつかあります。調薬スキルのレベル上昇やレシピ本の入手、調薬セットのグレードアップによって解放されていきます」

「なるほどのぅ」


高性能な薬のレシピを手に入れるためにも、たくさん薬を作ってスキルレベルを上げる必要があるんだね。

ちまちま物作りをするのは好きなので、そういうのは割と性に合うかもしれない。


「薬の素材は植物や果実、モンスターの牙や角、キノコ等、多岐にわたります。また一部の高級素材の中には調薬スキルのレベルが高くなくては発見できないものがあります」

「ふむ、何をするにもレベルが大切になりそうじゃのう」

「そうですね。はじめのうちは初級ポーションなどの簡単な薬を作り続けてレベルを上げるのが得策かもしれません。……ひとまず説明としてはこの辺りでしょうか」

「なるほどのう。――うむ、色々と世話になったのう、感謝するのじゃ!」


おじさんの丁寧な説明を聞き終えると、礼を言って私は店をあとにした。


「まずは初級ポーション作りじゃな!素材を集めるのじゃ!」


『一般の素材であればレシピから確認できるよ』


「ほう、それは便利なものじゃなぁ」


素材集めなんて大変そうだけど、入手できるエリアが分かれば少しは楽ができそうだね。


土にまみれて素材集めなんて、真祖たる我のすることでは無いけど、しょうがないか……。

ま、本番は調薬だし、肉体労働なんてさっさと済ませてしまおう。




――――




「む!またあったぞ!」

「見るのじゃ!見つけたぞ!」

「クククッ!集まる集まるのじゃ!」

「みっけじゃ!」

「たーのーしーのじゃあぁぁ!」


やばい。

素材集め楽しすぎる。

小さい頃に四つ葉のクローバーとか珍しい形の石とかを全力で探してたのを思い出す。

ENOには戦闘を殆ど行わず、生産に特化して楽しんでいるプレイヤーがいるんだけど、今ならその気持ちがよく分かる。


『うっきうきで草』

『小学生のイチゴ狩りみたい』

『生産沼にようこそ』

『完全に女児』


うるさいやい。


私は始まりの街近くの草原で、初級ポーションの材料である『トルメニア草』を採取していた。


現実世界では時刻は夜だけど、こっちの世界の時刻は昼間。

このエリアに出現するモンスターは今の私からすれば格下だけど、種族特性で全体的にステータスが減少していることもあって油断はできない。


周囲の警戒をしながらお目当ての素材を探すというのは、中々に骨の折れる作業だけど、それゆえに見つけたときの喜びもひとしおだ。


それにトルメニア草は初級素材だからか、意識して地面に目を向けているとそれなりの数が見つかる。


簡単には見つからないけど、目を凝らして探せばそのうち見つかるという、絶妙な生息数。

見つけた時には思わず笑みがこぼれるくらいには楽しい。


視聴者さんと雑談をしながら、かれこれ一時間半は『トルメニア草』を収穫し続けた。


「無限に遊べるのう、これ」


『分かる』

『VRの採取って楽しいよね』


「ま、トルメニア草はかなり集まったことだし、一度街に戻ってポーション作りに移行するとしようかのぅ」


『ポーションに異物が混じらないように、宿屋とかで部屋をとってから作るのが良いかも』


「む、そういうのもあるのか。さすがはENOじゃ、随分と細かいのう」


インベントリを確認し、たくさん取れたトルメニア草に笑みを深めれば、私は上機嫌で始まりの街に向けて歩き出した。



――――



「では早速、ポーション作りを始めるのじゃ!!」


『わー!』

『ぱちぱち!』

『調薬はいいぞ!』


始まりの街に戻った私は、すぐに格安の宿(一泊300モル)を借り、床にトルメニア草と初級調薬セットを広げた。


「クククッ、我は悠久の時を生きる吸血姫ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世!人間の行う調薬なぞ、造作も無いのじゃよ!」


私はウィンドウでレシピを空中に表示させると、いつでも見られるように、ウィンドウの位置を調節する。

ん、これで準備万端。

早速作業に取り掛かろう。


床に置かれたすり鉢の中に、先ほど採取したトルメニア草を二枚入れる。

それを手に持ったすりこぎ棒で潰し、かき混ぜていく。


ごりごりごりごり……。


「ゆっくり……だまにならぬようにかき混ぜる……ゆっくり…だまにならぬようにかき混ぜる……」


ごりごりごりごり……。


既にかなりに楽しい。


レシピを呟きながら手にしたすりこぎ棒を円を描くように優しく回していくと、だんだんとトルメニア草が草の原型を失っていき、ペースト状の草団子のようになっていった。


『見てて心配になってくる』

『あれだけ言ってたのにすんごい慎重なの解釈一致すぎる』

『なんか絵面がシュールw』


「ゆっくり……だまにならぬようにかき混ぜる……言いたい放題いいおって、あとで覚えておくのじゃぞ……ゆっくり……だまにならぬようにかき混ぜる……」


ENOの生産は現実のものからかなり簡略化されているとはいえ、実際に生産する際にはいくつかの工程をこなす必要がある。


料理であれば、材料を切ったり、煮込んだり、味付けをしたり。

鍛冶であれば金属を叩いて伸ばして鍛造したり、焼き入れをしたり。


調薬に関しては今行っている作業がまさにそれだね。


当然こうした作業が上手ければ上手いほど、完成品のクオリティも上がっていく。

極端な話、三ツ星レストランのシェフが料理スキルレベル1で製作した料理は、素人の料理スキルレベルを上げただけのユーザーの作った料理を越える性能を持つことがある。


それだけこの作業は重要ということ。

であれば、いくら初級ポーションとはいえ手は抜けないよね。


擦り終えたトルメニア草をお椀状の金属器に移し変えると、水袋から水を流し込む。

金属器の縁にはメモリが描かれているので、その線に合わせて入れれば良いだけ。

かんたんかんたん。


次は……水に匙を入れてかき回す。沈殿しているトルメニア草が全体に散っていき、すぐに中身の水全体が濃い緑色に変わっていく。


それを確認した私は金属器の下に予め敷いていた模様の描かれている布に魔力を流し込む。

これは魔術師ギルドが総力を挙げて作ったとされる『加熱布』というアイテム。

分かりやすく言うと現実世界でいうところのIHだ。


ゆっくりと匙で水とトルメニア草の混合物をかき回していると、すぐに水が沸騰し、ぐつぐつと音を立て始めた。


周囲に漂う濃厚な『草』の臭いが少しずつ霧散していく。

それと同時に透明感の無い緑に染まっていた水の色素が少しずつ抜けていく。

そのまま一分ほど加熱しつつかき回していると、微かに黄緑色をした透明感のある液体へと変化していった。


これは薬としての効果が消えたようにも失敗にも見えるけど、そうではなくて「水にトルメニア草が馴染んだ証拠」ということらしい。


私は完成した液体を試験管のようなガラス筒に流し込むと、なるべく空気に触れる時間の無いように、急いでコルク栓で蓋をした。



「――んむ!完成じゃなッ!!」



ふふふ、正直最初から成功するとは思ってなかったけど、初級レシピということもあってかなんとか完成させることができたらしい。どや!


『おー!』

『黒焦げの何かになると思ってた』

『料理出来ないって聞いてたのに、なんで調薬はできるんだw 』

『ぱちぱち』

『生産スキルも楽しそうだな』


一応完成した小瓶に鑑定スキルを発動させてみると――



――――

『初級ポーション』


僅かにHPを回復させる下級ポーション。


製作者:ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世


クオリティ:☆☆☆★★★★★★★

――――



『初回でクオリティ星3つはなかなか才能あるかもね』

『お、なかなかのハイクオリティ』

『いいじゃん』


ん、無事に出来ているみたいだね。

クオリティの基準はいまいち分かってないけど、視聴者さん達の反応を見ていると、けっこう良い完成度みたいで嬉しい。


よし、このまま残りのトルメニア草も全部初級ポーションにしちゃおう!






その後、2時間近くの時間無心でポーションを作り続けた私はそのまま寝落ちをしてしまい、何故か寝落ち配信として、その日の配信視聴者数ランキングで一位を記録するという、全く嬉しくない事態に陥る事となった。







調薬:Lv1→6




私はMMOでは戦闘よりも黙々と製作をして遊んでいるタイプの人間です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 デイリーランキング7位に先日なっており、面白そうだと読み始めました。 ここだけの話、とても面白いですよ…(囁き) マスコット姉ちゃんと変t…シスコン妹の掛け合いは可愛く…
[一言] そりゃ、マスコットちゃまの寝顔なら何時間でも見られる人種が多いからね
[一言] >私はMMOでは戦闘よりも黙々と製作をして遊んでいるタイプの人間です。 わかる。PSがそんなに必要ないから気楽にやれるよね
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