#015 ルルネ様、報酬確認をする
「眷属ども!こんばんは、じゃ!」
ガロウ戦の翌日、私はカメラアングルで挨拶をした。
配信タイトルは「戦闘報酬の確認じゃ!」。
澪音が言うには、ガロウ戦が終わった後の私は極度の疲労状態だった為か、そのままぽてりと倒れるようにして寝てしまったらしい。
確かに正直そのあたりの記憶どころか、ログアウトした記憶もない。
何だったら気が付いたらいつの間にかログアウトしてて、今日の朝だったよ。
体質の問題なのか、昔から目を酷使するとすぐ眠たくなっちゃうんだよね。
当然報酬確認なんて全くできてない。
ENOの仕様上、プレイヤーの意識がなくなった際は自動的にログアウト処理がされるんだけど、ゲーム内の体は3分間、無防備な状態でその場に残される。
ヘッドセットを外して敵との戦闘から意図的な離脱ができないようにするための仕様らしい。
ゲーム内のアバターとはいえ、寝顔を視聴者さんたちに見られたのは少しだけ恥ずかしいなぁ……。
「――こほん、まずはドロップ品の確認じゃな!……んむ!素材品がかなり落ちたのじゃ!」
【ガロウの爪】……ガロウの鋭い爪。素材アイテム。
【ガロウの牙】……ガロウの堅牢な牙。素材アイテム。
【月爪の毛皮】……美しい毛並みの毛皮。素材アイテム。
インベントリを確認してみると、各部位がそれぞれ十個近くドロップしており、思わずにんまりと笑みを浮かべる。
うん、これだけあれば装備品とか色々作れそう!防具は若草装備があるし、そろそろ初心者用両手斧を卒業したいかも。
それにネームド素材は貴重っぽいし、使わない部分は売却して、それなりの利益もありそうだね。
「……ぬ?何じゃこれ?【月爪の心核】……?」
――――
【月爪の心核】…月爪ガロウの心核。ガロウを征し、延いては月そのものに認められた者に与えられる恩寵である。汝七つの扉を目指すが良い。
※『月爪の心核』は破棄できません。
※『月爪の心核』は破損しません。
※『月爪の心核』は鍛治スキル、裁縫スキル、彫金スキルのいずれかを使用することで武器、または防具・アクセサリーの素材にすることが出来ます。
――――
これもどうやら他のアイテムと同じで、素材用のアイテムみたいだけど、どうにも他のドロップ品とは雰囲気が違うみたい。
『心核ってはじめて聞いたな』
『レアドロップじゃね?』
『ネームド専用素材?』
『説明見るとそうっぽいね』
『そもそもネームドの情報が殆ど出回ってないからな』
『七つの扉ってなんかのクエか?』
むぅ。
どうやら視聴者さんもあんまりよく知らないみたい。
仕方ない、後で心核については色々調べてみようかな。
「次はステータスじゃな!ガロウはかなり格上のモンスターだったし、レベルも一気に上がったのじゃ!」
――――
【ルルネ=フォン=ローゼンマリアⅣ世】
Lv : 12→18
HP : 79→112
MP : 52→71
STR : 102→114
DEF : 9
INT : 20→28
MND : 8
DEX : 7
AGI : 115→120
LUK : 13
【スキル】
血魔法:Lv3
魔眼:Lv3→5
吸血:Lv1
両手斧:Lv4→6
調薬:Lv1
暗視:Lv2→3
鑑定:Lv2
反撃:Lv1→4
【装備】
E:『初心者用両手斧』
E:『若草のリボン』
E:『若草のドレス』
E:『若草のブレスレット』
E:『若草のヒール』
【種族特性】
太陽・聖属性弱点
夜時ステータス微増
――――
『おぉ!』
『そんな上がるのか』
『レベリング効率最高かよ』
『ガロウ周回が出来るならな』
『もう中級者レベルまで来たね』
『つよつよきゅうけつき!』
『中級者なのに初心者用両手斧です?』
『相変わらず脳筋ステで笑う』
『だって真祖さま頭はあれだし……』
『少しだけINTに割り振る辺り、可哀想な子感が強まる……』
「ふふン!つよつよじゃろう!これで我もまた至高の吸血姫へと近付いたのじゃッ!……あと我は頭脳もつよつよなのじゃが」
『え』
『つよつよ頭脳……?』
『誰が?』
「つ、次いくのじゃ!」
くそぅ、ほんとなのに……。
いつも澪音も「姉さんはいつも色々なお話を考えていて凄いですね。その頭を他のことにも使えれば良いのですが」って褒めてくれているし。
「んむ!称号もいくつか貰えたぞ!見るが良い!」
――――
【二つ名持ち討伐者】……ネームドモンスターの討伐に成功した者に与えられる称号。冒険者ギルドなど一部のキャラクターからの信用を得られる。
【ジャイアントキリング】……自分よりも遥か格上の敵を打ち倒した者に与えられる称号。クリティカル発生率を僅かに高める。命のやり取りにおいて能力の高さなど勝率を高める要素のひとつに過ぎないのだ。
【月の加護】……月の代理人の証。月の加護。もしくは呪い。
【吸血鬼(眷属)】→【吸血鬼(貴族)】……吸血鬼の眷属から貴族へと昇格した者に与えられる称号。あるいは人の身からまた一歩堕ちただけかもしれない。『血魔法』『魔眼』『吸血』スキルの効果量を僅かに高める。
――――
んむ!
4つも貰えて実にほくほくじゃな!
何よりも吸血鬼の眷属から立派な貴族になれたのが嬉しい。これでゲーム内でも一人前の吸血鬼だね!
……まだ一回も吸血してないのは秘密だぞ。
『二つ名持ち討伐者』と『ジャイアントキリング』は純粋にメリット付きの称号で分かりやすいね。
冒険者ギルドというのはクエストを受注できたり、仕事を依頼できたりするファンタジーゲーム定番の施設なんだけど、そういえばまだ一度も行ってないなぁ。全部リーフラビットとかいうウサギが悪いんだよ。
『一気に増えたなぁ』
『ついに種族称号進化か』
『真祖に近付けたね!』
『月の加護だけ分からん』
『ジャイアントキリングは澪音ちゃんの配信で取得するとこ見たことある』
『二つ名持ち討伐者もネームド倒したときの共通称号っぽい』
うん、確かに『月の加護』だけはよく分かんないね。
微妙に不穏な説明文だし。
称号による効果なんかはプレイヤーの切り札になるほど強力なものも存在しているから、あんまり公の情報としては出てないというのは配信前に澪音が教えてくれた。
一応攻略サイトを調べたり、掲示板とか使ってみるつもりだけど、分かるかなぁ……。
数は少ないだろうけど、ネームドを倒しているプレイヤーは居るし、ガロウを倒したパーティーだって私が初めてじゃないはず。どこかに情報が公開されていると良いんだけど。
後は、調べるとしたらゲーム内から情報を調べるのも良いかもしれない。
「そうじゃ、眷属たちよ。この世界に図書館みたいな場所はないかのう?」
『図書館?』
『確か始まりの街の西区にあった気がする』
『へー、図書館あるんだ』
『一度も言ったこと無いな』
『真祖さま絵本とか置いて無いよ?』
「え、絵本はもう卒業したのじゃ!」
うぐぐぐ……っ!
言いたい放題いいおって!こうなれば図書館でいんてりじぇんすつよつよになって見返してやるのじゃ!




