19 村の周りの罠(2)
『その先に、落とし穴を作ってあるのだが……何か落ちているな』
リーダーが指し示す先には穴が開いており、何かが落ちたような気配があった。
穴に落ちたときにいっしょに枯れ葉などがヴィーヴルにも判断可能な鳴き声ではなかったので、動物だと言うことだけは分かった。
「こう言うこともあるのじゃ」
『まぁ、人間に向けて作ってはおるが、動物が掛かってしまうこともある。
動物が掛かったら、その日は食事が豪華になるだけだ』
「食べられるだけ、動物の方が良いのじゃ」
『人間に先に見つけられたら、取られてしまうがな』
人間にとっても労せずして食料が手に入るのだから、そのまま見過ごす必要はない。
天からの恵みとして、躊躇なく受けとることだろう。
「ただの落とし穴ではないようなのじゃ」
『木の枝を尖らせて、穴の底から立てている。
こうしておけば、冒険者が怪我をするかもしれない。
上手くいけば、冒険者を仕留められるかもしれないからな』
「あわよくば……なのじゃ?」
『あぁ、そうだ。
冒険者だって防具を着けている。
木の枝位では防がれてしまうだろう。
それでも、防具と防具の隙間にでも刺されば、怪我をさせられるからな』
「成る程なのじゃ」
『ヴィーヴルなら、他にもっと良い方法があるぞ』
「どうすれば良いのじゃ?」
『ヴィーヴルは水魔法が使えるであろう?』
「使えるのじゃ」
『それでは、少し穴を深く作り、木の枝ではなく水を入れておく方が良いだろう』
「どうしてなのじゃ?」
『防具はそれなりの重さがある。
防具を着けたままでは、上手く泳げないであろう』
「木より確実なのじゃ?」
『そうだな。
もし泳げたとしても、剣は手入れし直さないと使い物にならなくなる。
弓だって、弦の調整が必要になるだろう。
足止めには最高だ』
「その話だと、魔法使いには効果がないと思うのじゃ」
『武器は杖ぐらいだから、影響はないだろう。
ただ、着ているものは間違いなく濡れてしまう。
濡れたまま戦うと集中力を欠くだけではなく、着ているものが身体に纏わり付いて戦いにくい、体力も奪うという、こちらにとっては良いことばかりだ』
「成る程なのじゃ」
『それに、相手の準備が整うまでに、こちらが準備を進められる。
相手の準備が整う前に襲ってしまえば、こちらは最初から有利に戦える』
「分かったのじゃ。
ただの落とし穴でも、少し手を加えるだけで予想以上に結果を得られそうなのじゃ」
『試しに、この落とし穴を改良してみてくれ』
「実践なのじゃ?」
『そう思ってくれても良いが、俺たちでは穴の中に水を満たしておくってことはできない。
実践ついでに、落とし穴も良くしたいんだ』
「造作もないことなのじゃ。
まぁ、教えて貰った代わりとすれば良いのじゃ」




