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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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11 山越え(1)

(これを越えるのは、一苦労しそうなのじゃ)


 ヴィーヴルの眼前には山々が横たわっている。

 迂回するには、遥か彼方まで行かなければならないようだ。


 ヴィーヴルは覚悟を決めて1歩目を踏み込む。


 飛び越えればすぐだろうが、その選択肢は使えない。

 多少手間だろうが、山を1歩ずつ歩いて越えるしかない。


(思っていたより大変なのじゃ……)


 今まで山登りをしたことがないヴィーヴルにとって、傾斜地を登るということがこれ程に大変だとは考えてもみなかった。

 少し進むだけで、自然と息が弾んでくる。


(少し、休むのじゃ)


 近くにあった岩に腰掛ける。


(この感じでは、何時になったら越えられるのか分からないのじゃ……)


 そう思うが、先に進むには山越えを決行するしかない。

 息が整ったところで、腰を上げて心を決める。


(ゆっくり、少しずつでも進むのじゃ)


 歩を進める速度は落ちたものの、先程のようにすぐに疲れを感じることがなくなった。


(ゆっくりと歩いた方が良さそうなのじゃ)


 ヴィーヴルはゆっくりと進んでいく。


 とりあえず、目指すは頂上だ。

 目標を決めたことにより、やるべきことが見えてきた気がする。

 時間に縛られないヴィーヴルにとっては、どれだけゆっくり進もうと関係ない。

 目標を達成することが重要だ。


 多少、息は上がってきたものの、休みたいと思うほどではない。

 1歩1歩、地面を踏みしめるかのように着実に登っていく。

 少しずつではあるが、間違いなく頂上へと近づいていく。


(魔道具を作っているときのようなのじゃ)


 ヴィーヴルは思わず苦笑する。

 あちらの方が身体的な負担は少ないかもしれないが、精神的な負担は遥かに大きい。

 上手く行かない時には、本当に少しずつ現状を打破していかないといけない。


 日が一番高いところを過ぎた辺りで、漸く頂上へと到着した。


(やっと着いたのじゃ。

 少し休むのじゃ)


 頂上から眺める周りの景色は、いつもと違って気分良く見ることができた。

 高さで言えば、飛んだときの方が高いだろう。

 高い方から見た方が気分良く見られると思っていたのだが、今の方が気分良く見られる。


(何故なのじゃ?)


 今までの考えが覆されたのだが、それほど悪い気分はしない。


(まぁ、良いのじゃ。

 今はこの景色を楽しむのじゃ)


 そうしている内に、その場から動くのが面倒になってしまった。


(今日のところは、ここで休むのじゃ)


 そのまま夜になり、サーシャとのお喋りを始めた。

 ヴィーヴルの頭上を、満天の星空が覆い尽くす。

 何時も見ている星空より、きれいに見えている気がした。


 暫くしてお喋りを終えた頃、雲行きが怪しくなってきて、突然の雨に襲われた。

 ヴィーヴルは慌てて土魔法で自身の周りを囲い、雨宿りを始めた。

 その雨は、朝日が登り始める頃まで続いた。


 雨音がしなくなり土魔法を解くと、遠くの空が白み始めていた。


(綺麗なのじゃ)


 徐々に周りが明るくなる様子を眺めながら、雨上がりの朝日にヴィーヴルは今まで感じたことのない、この世界の美しさを感じていた。

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