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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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08 底無し沼

 ヴィーヴルは、今日も気分良く草原を歩いていた。

 やはり歩きやすい地形に加えて、全身で日の光を浴びていられるということが大きい。

 ヴィーヴルが普通の子供だったならば、鼻唄の1つでも出ていたのかもしれない。

 しかし、ヴィーヴルはこれまで唄というものを聞いたことがなかった。

 龍の雌から子守唄を聞いたこともないし、サーシャが唄や鼻唄を歌ったりしているのをみたことがなかった。


 そんな訳で、ヴィーヴルは上機嫌に無言のまま歩いていた。


 そんなヴィーヴルの前に、水溜まりが見えた。

 見た感じ、それほど大きくない様だ。


 真っ直ぐ進むと、足元が濡れてしまう。

 かといって、水溜まりを飛び越すには普通の人間では出来ないくらいの大きさがある。


(避けて進むのじゃ)


 ヴィーヴルは、水が見えている範囲を避けるようにして進んだ。

 次の瞬間、草の根元に隠れていた泥の中へと身体ごと引きずり込まれるように落ちてしまった。


(これは、何なのじゃ?)


 ヴィーヴルがもがけばもがくほどに、どんどんと泥の中へと引きずり込まれてしまう。

 胸元までその身が隠れてしまったところで、引きずり込まれるのが止まった。

 そして、動かなければそれ以上落ちないことに気がついた。


(びっくりしたのじゃ。

 でも、どうすれば良いのじゃ……)


 このまま動かなければ、これ以上に落ちることはなさそうだ。

 だが、何時までもこのままでいる訳には行かない。

 動かないでいれば現状維持はできるだろうが、現状を打破してこの場所から抜け出す必要がある。


 何をするにせよ、腕が外に出ていないと何もできないだろう。

 そう考えたヴィーヴルは、ゆっくりと両腕を泥から出そうと試みる。


(ゆっくり……なのじゃ……)


 ゆっくりと、少しずつ腕を動かす。

 まずは右腕、そして左腕を泥から出すことができた。


(ふぅ、やっと出せたのじゃ。

 次は、何か掴まるものを探すのじゃ)


 辺りを見回すが、草ぐらいしか掴むものはない。

 その草も、ヴィーヴルの体重を支えられるほど、しっかりと根を張っているようには見えない。


(困ったのじゃ。

 どうすれば良いのじゃ)


 ヴィーヴルは、暫くそのままの体勢で脱出方法を考えていた。

 そして、ふと閃いた。


(そうなのじゃ。

 地上の高さまで飛べば良いのじゃ。

 空を飛ぶわけではないのだから、問題ないのじゃ)


 ヴィーヴルは爪先が泥に触れるか触れていないかの高さまで飛び上がった。

 端から見れば、背伸びして立っているだけにしか見えない。

 ただ、その姿は泥だらけにはなっているが……


(とりあえずは、しっかりとした地面の上まで移動するのじゃ)


 そのまま、しっかりとした地面に生えた草の上まで移動した。


(酷い目に遭ったのじゃ。

 それにしても、あれは何だったのじゃ?)


 今、この場にヴィーヴルの疑問に対して答えられるものは居ない。


 ヴィーヴルは水魔法で出した水を頭から被り、全身の泥を洗い流した。


(乾かしたいが、薪がないのじゃ)


 正確に言えば、ストレージの中に薪は入っている。

 だが、まだ生乾きの状態なので上手く燃えない。


(日に当てて、乾くのを待つのじゃ)


 ヴィーヴルはその場で横になり、乾燥させるためという名目の日向ぼっこを始めた。

 乾かすためと言うのもあるが、ヴィーヴルとしては泥の中に落ちたことで精神的に多少疲れてしまい、ゆっくりしたかったということもあった。


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