03 洞窟
ヴィーヴルはその日も森の中を歩いていた。
あれから結構な距離を数日か掛けて歩いているはずなのだが、まだ、森を抜けられそうな気配はない。
(これ程までに広い森だとは、思っておらんかったのじゃ)
実際の森の大きさは、ヴィーヴルが感じている程の大きさはない。
真っ直ぐに平坦な道を歩いているわけではないので、そのように感じているだけだった。
その事は後に空から眺めたときに分かるのだが、地上を歩いているヴィーヴルにとってはそれ以上の大きさの森として感じられた。
だが、空を飛んでいこうとは思わない。
今となっては他人に見られる事よりも、歩き抜くということに対して何らかの目標を抱いていた。
踏破することに固執していたのかもしれない。
そんな訳で、ヴィーヴルはひたすらに道なき道を行く。
歩き疲れたら、一休みして水魔法で喉を潤す。
そんな時、森の中に地下へと通じる穴を見つけた。
動物が入るものとしては少し大き過ぎるし、掘った穴としては入り口が歪なものだった。
(中に何か居るのじゃ?)
生体魔法で、洞窟の中を探ってみる。
それほど大きな生物の存在は感じられない。
ヴィーヴルはその穴に興味を持ち、中へと入り始めた。
無駄に衝突することは、ヴィーヴルとしても本意ではない。
こちらの存在を相手が知ることなく終われば、それに越したことはない。
物音を立てないように、回りの様子を見ながらゆっくりと慎重に進む。
その間も生体感知を発動させているが、やはり大きな生物の反応はない。
奥へと進む間、頭上を飛び回るコウモリが鬱陶しい。
やる気になれば、火魔法で打ち落とすことも可能だが、そんなことはしない。
邪魔をしているのはヴィーヴルの方である。
暫くすると、多少、開けた場所へと出た。
相変わらず、生体感知の魔法には大型動物の反応はない。
ここまで見てきたところ、住処としていた洞窟とは違い、綺麗な石などは見当たらなかった。
(今日は、ここで寝るのじゃ)
そう思うとヴィーヴルは変化魔法を解き、龍の姿へと戻った。
そうして、そのまま丸くなって寝始めた。
(夜の間まででも、身体を休めるのじゃ)
数日に渡り、気の休まるときになかったヴィーヴルにとっては、久方ぶりの龍の姿での休息だ。
少しでも長く龍の姿で休みたかった。
そのまま、サーシャから例の魔道具によるお喋りが開始されるまで、龍の姿のまま休んでいた。
サーシャとのお喋りの間は、変化魔法により人間の姿形となる。
こうしないと、人間の言葉を話すことができないのだから仕方がない。
多少の手間はあるが、サーシャとのお喋りはしたい。
人間の事を知るためとかではなく、単に友達としてありたかった。
サーシャとのお喋りを終えた後、再び龍の姿へと戻り洞窟の中で、久しぶりに朝までの熟睡を満喫した。




