32 落とし穴
「ヴィーヴルちゃん、おはよ~」
「サーシャちゃん、おはようなのじゃ」
「きょうは、なにする~?」
いつも通りの会話だ。
そして、いつも通りにヴィーヴルが遊びの提案をするのだけど、今日は少し違っていた。
「今日は罠の様子を見に行きたいのじゃ。
良いのじゃ?」
「うん、いいよ~」
ヴィーヴルはサーシャの手を取り、龍の雌が作った罠の場所へと瞬間移動した。
罠と言ってもただ穴を掘っただけではあったのだが、間違って穴へと落ちてしまう動物が偶にいたことにより、罠としての機能は満たしていた。
今回、罠の中に動物の姿は見当たらなかった。
正確に言えば、今回もであった。
前回来た時も動物の姿はなかった。
「今日も居ない様なのじゃ」
「そうだね~」
ヴィーヴルには食べ物を摂る必要はない。
食べなくても生きていける。
なので、罠に獲物がいなくても何の問題もない。
ヴィーヴルが罠を張って、動物を捕まえる理由は、サーシャにご馳走するためだ。
毎日、朝から夕方まで一緒になって遊んでいるサーシャに、魚だけではなく肉も食べさせたいからだ。
実際、サーシャは魚より肉を食べるときの方が喜んでいる様だ。
ストレージの中には、龍の雌が仕留めていた動物の肉は沢山残っている。
だが、今のところは減る一方なので、少しは心情的にも余裕は持っておきたい。
1匹捕まえれば、その余裕は持てるだろう。
(何とかして、1匹捕まえたいのじゃ……)
「このままでは、もう捕まえられないかもしれないのじゃ。
何らかの工夫をする必要が、あるのかも知れないのじゃ」
「どんな?」
「それは……今から考えるのじゃ」
動物に罠があることを分からせない様にするのだから、穴を隠せば良い。
隠すだけならば、土魔法で穴を覆い隠すだけだ。
土魔法で隠す時の強度を丁度良い具合にしないといけない。
土魔法の強度を上げすぎると、動物が罠にかからず穴の上を通過していくだけだし、強度を下げすぎると小さい動物でさえも穴に落ちてしまう。
どのぐらいの強度にするのかは、何度も試してみて経験することにより分かるものなので、今のヴィーヴルでは丁度良い強度は想像もつかない。
「今から、魔法で穴を隠すのじゃ。
サーシャちゃんは、穴の側に近づいてはいけないのじゃ」
「わかった~、ここでまってるね」
ヴィーヴルは土魔法を発動させて、穴を覆い隠した。
そして穴の上を歩き始めて、反対側へと渡りきった。
(これでは、強すぎるのじゃ)
穴の上を覆った土魔法を消し、先程より少し強度を落とした土魔法で穴の上を覆った。
この作業を繰り返し行い、ヴィーヴルが乗って落ちる強度を探った。
「これで、妾より重い動物だけが穴に落ちるのじゃ」
「よかったね、ヴィーヴルちゃん」
「あぁ、良かったのじゃ。
では、遊びに行くのじゃ」
「なにするの?」
「う~ん……川で漁でもするのじゃ?」
「わかった~、じゃあ、いこっか~」
2人は川へ行き、漁を行った。




