07 引っ越し
「貴方は何故ここまで来たのですか?」
「この辺に煙が立ったのを見たからだ」
「煙、ですか?」
少し前にヴィーヴルが使った火魔法が木に燃え移ってしまい、慌てて水魔法で消したのだけどその時のものだろうか?
「良く見えましたね」
「狩人だからな。
山火事になったら、それはそれで生活が立ち行かなくなってしまうから、その辺はすぐに気づくさ」
「そうですか。
それで、ここまでやって来たと言うことですね」
「あぁ、煙の色は白かったから大ごとにはならないと思ってはいたが、確認の為にな」
「それはお騒がせしたようですね。
あれは、ここで魔法の練習をしていた時に木に燃え移ってしまったのを消した時のものだと思います。
お騒がせしてしまい、済みませんでした」
「それなら問題ないとは思うが、先ほど戦った感じでも、間違っても木に燃え移らせる様な事になるとは思えんのだが……」
「あぁ、それは……ヴィーヴル、こちらにいらっしゃい」
ヴィーヴルは、小枝の陰から降りてきて、雌の龍の横へと立った。
「この子の魔法が、逸れてしまったんです」
「ごめんなさい」
「いや、すぐに消えたようだし、確認に来ただけだ。
お嬢ちゃんが謝る様な事じゃないから、気にしなくても良いよ」
狩人の男はヴィーヴルと視線を合わせる様に膝立ちとなって、優しく微笑んだ。
「うん、ありがとう」
狩人の男は立ち上がった。
「俺の来た理由は話した。
今度は、こちらの質問に答えて貰えないか?」
「答えられる事なら答えましょう」
「あんた達は何者なんだ? 何で、こんな山奥に隠れる様に住んでいるんだ?」
「何者なのかは答えられません。
もう、分かっているとはお思いですが、普通の人間ではありません、としかお答えできません。
ですから、此処に隠れ住んでいるのです」
「こんな所に居て、食事はどうしているんだ?」
「先程の戦闘でもお分かりかと思いますが、魔法を使えば調達には不自由致しません」
流石に『食事は要らない』とは答えるわけにはいかない。
龍族の事を知っているか分からないが、素性も知らない相手に与える情報は少なければ少ない程良い。
「……分かった。
色々と事情がありそうだから、これ以上は尋ねるのは止そう。
安全も確認できたようだし、帰っても良いかな?」
「待ちなさい。
貴方をこのまま帰して、他の人に此処の事、私たちの事を口外されてしまっては困ります。
口を封じてしまうのが一番なのですが、私も出来るならばそこまでの事はしたくありません」
「俺としても、それは勘弁して欲しいところだな。
家にはそこの嬢ちゃんと同じくらいの子供がいるんだ。
その子が路頭に迷ってしまう。
同じ子を持つ親として、子供をそんな目に合わせたくないってのは分かるだろ?」
子供が居るのならば……
「貴方たちは、どの辺に住んでいるのですか?」
「林の中の一軒家に住んでいる」
「林の中ですか。
周りに他の家は無いのですか?」
「無いな。
狩人だから、狩場の近くに住んだ方が何かと都合が良い。
品物だって、ある程度溜まってから街へと持って行った方が効率も良いだろうしな」
「分かりました。
では、私達もそちらへと移り住みましょう。
貴方の子供を人質としますが、貴方たちの生活には干渉いたしません。
今までと同じように生活してください」
「そんな事急に言われても、余分な部屋は無いから住まわせることなんて出来ないぞ?」
「貴方たちは今までと同じように生活しても構わないと言ったでしょう? 私たちが住む家くらいはすぐに作れます」
土魔法で土を盛り上げても、穴を掘って地中に住むようにしてもどうとでもなる。
「それで良いのなら構わんが……おかしな押しかけ隣人が出来たもんだ」
「貴方が口外しないことを、見張らなければいけませんからね。
同じ親として、まさか子供の命を懸けてまで、私達の事を口外しようとは思わないでしょうから」
こうして、狩人の隣へと引っ越すことが決まった。




