28 魔法の精度を上げる
「サーシャちゃん、今日は妾に漁を任せて欲しいのじゃ」
「いいけど、なにをするの?」
「こうするのじゃ」
ヴィーヴルは川の中をじっくりと見て、腕を横へと払った。
直後、川に水飛沫が上がった。
「逃したのじゃ」
「なにをしたの?」
「魔法で魚を捕まえられないか、試してみたのじゃ。
最近、魔法が正確に使えていなかったのじゃ。
それで、もう一度きちんと練習しなおそうと思ったのじゃ」
ヴィーヴルは、魔法を行使するだけならば毎日行っている。
サーシャの送り迎え、伐り倒した木を浮かせたり、木の皮を剥いだりと様々な魔法を使っている。
だが、どれも動物に対して行使されるものではない。
動くものを相手にするためには、どちらの方へ逃げるのか先読みする必要があるし、より正確な場所へ魔法を発動させて攻撃しなければいけない。
ヴィーヴルはそれらのことを最近行っていなかったので、勘を取り戻すために今日の漁を買って出た。
「じゃあ、サーシャはあっちにいって、ながれてきたおさかなをひろうね」
「よろしく頼むのじゃ」
上流でヴィーヴルが魔法で魚を仕留めて、下流で仕留められて流れてきた魚をサーシャが拾う。
ヴィーヴルにとっては魔法で魚を仕留めることに集中できるし、サーシャは魚を拾うというのが遊びみたいに感じたので、両方にとって益のあることだった。
ヴィーヴルが何度目かの魔法により、やっと魚を1匹仕留めた。
うまい具合に、頭と身体が真っ二つに別れた。
「さーしゃちゃん、行ったのじゃ」
「え~、どこ~?」
サーシャは一生懸命、川面を見回すが見つけられない。
「そこなのじゃ」
ヴィーヴルは頭と身体が泣き別れた魚の在処を指差すが、サーシャは一向に見つけられない。
「もう、そこにあるのじゃ。
ほら、サーシャちゃんの目の前にあるのじゃ」
「えっ、めのまえ? ないよ~……って、あ、これか」
サーシャはやっとヴィーヴルの仕留めた魚を見つけることができた。
「見つかって、良かったのじゃ」
「そうだね~」
この後、2人は同じような感じで魚を捕まえていった。
幸いなことに、サーシャが見逃してしまった魚は無く、ヴィーヴルが仕留めた魚を全て回収することができた。
残念なことは、この日の漁で捕らえた魚は売り物にならないと、サーシャの父親から告げられた。
魚の身体に傷があるものは売り物としての価値が下がってしまい、更に頭がないようなものは売り物にならないそうだ。
(人間は焼いた魚の頭を食べぬのに、頭がないと売り物にならないのじゃ? 不思議なのじゃ……)
そうは思ったものの仕方がないので、今日の分は山分けとした。




