26 雨の日は……
「おはよう、ヴィーヴルちゃん。
きょうは、いえのなかであそぶ?」
ヴィーヴルは、今日も朝からサーシャの家の入口の前へと来ていた。
「偶には、雨の日に森の家に行ってみたいのじゃ」
これまで、森の家には雨が降っていない時にしか行ったことがなかった。
雨の中を移動してまで森の家に行く必要性が全くないのだから。
一緒に遊びたいのならばサーシャの家でも十分だし、話がしたいのならば魔道具を使えば良い。
「もりのいえにいくの? ぬれちゃうよ」
「それは大丈夫なのじゃ」
「あ、しゅんかんいどうでいくんだね?」
「今回は瞬間移動を使わずに、歩いて行くのじゃ」
「え~、それじゃあ、やっぱりぬれちゃうよ~」
「こうすれば大丈夫なのじゃ」
ヴィーヴルの頭の上で、薄い空気の渦が出来ていた。
「すご~い、どうやってるの?」
「頭の上で風魔法を回しておるのじゃ。
こうすれば、雨は下に来ることなく周りに飛んでいくのじゃ」
「へぇ~……」
サーシャはヴィーヴルの頭上で渦巻いているものに触れようと、手を伸ばした。
「危ないのじゃ。
触ってはいけないのじゃ」
咄嗟にヴィーヴルは風魔法を解除する。
「そうなの?」
サーシャは何処か他人事のようにヴィーヴルへと問い掛ける。
「見えないけど、木を伐ってしまうくらいに危ないものなのじゃ」
「わかった~、きをつけるね」
やはり、何処か他人事のような返事をした。
自分が気を付けなければいけないと決心したところで、改めてサーシャを森の家へと誘う。
「そう言う訳で、これを使えば雨に濡れなくて済むのじゃ。
サーシャちゃん、森の家に行くのじゃ」
「わかった~、ちょっとまっててね。
おとうさんにいってくる~」
雨の為、狩りを休んで家に居るのであろう父親に、サーシャは出掛けることを伝えに行った。
「おまたせ~、じゃあ、いこっか」
ヴィーヴルとサーシャは手を繋いで森の家へと向かって歩いた。
一応、生体感知を行っているが、雨の為か動物や魔物たちの気配は全くない。
周りに聞こえる音と言えば、雨粒が木の葉を叩く音ぐらいだ。
「なんか、ふしぎなかんじだね……」
「本当にそうなのじゃ。
何時もとは違った森のように感じるのじゃ」
その後、2人は言葉なく森の家まで歩いてきた。
そのまま、言葉を交わすことなく無言のまま家の中へと入る。
ヴィーヴルとサーシャは入り口近くに座ると、やっとヴィーヴルが言葉を発した。
「雨の日に来れば何か違うかもと思ったのじゃ」
「うん、ちがったね」
「何か、こう、寂しいと言うか……何とも言えない感じなのじゃ」
「そうだね……でも、これはこれでいいとおもったよ。
つぎのあめのひも、またこようね」
「そうするのじゃ。
勿論、歩いてくるのじゃ」
「うん、そうだね」
その日、2人は森の家でお喋りをして過ごした。




