19 かいほう(2)
「ヴィーヴルちゃん、サーシャかんがえたんだけど、げんきになったらもりにかえすよ」
サーシャは夜遅くまで起きていたのだろうか? 目を擦りながらヴィーヴルに伝えた。
欠伸こそはしていないものの、今にも出そうではある。
「分かったのじゃ」
「でも、どうしてなまえはつけちゃだめなの?」
「名前を付けると、別れる時に余計につらくなると絵本に書いてあったのじゃ。
どうしても別れ難くなる様なのじゃ。
それを思い出したのじゃ」
絵本には、名前を付けたことにより別れがつらくなったと書かれていたが、何故、そうなるのか理由は書かれていなかった。
なので、ヴィーヴルは(人とは、そう言うものなのか……)と思う事としていた。
理由を知るほどの経験を未だしていないし、長くは生きていない。
「そうなんだ……じゃあ、なまえじゃなければいい?」
「名前じゃないのじゃ?」
「うん、しましまってどうかな?」
「しましま? 何故、しましまなのじゃ?」
「からだにしましまのもようがあるからだよ。
これだと名前じゃないでしょ。
ね? いいでしょ?」
『しましま』と言う名前を付けてしまったような気がしないでもないが……ここでヴィーヴルが反対したとしても、恐らくサーシャは違う名前を提案するだろう。
名前らしい名前ではないという事が唯一の救いだろうか?
「分かったのじゃ。
あ奴の事は『しましま』と呼ぶことにするのじゃ」
「やった~。
じゃあ、はやく『しましま』にあいにいこ~」
「分かったのじゃ」
ヴィーヴルとサーシャは、昨日と同じように手を繋いでしましまの元へと向かった。
余談ではあるが、イノシシの子供の身体に縞模様があるのは子供の内だけで、大人になると消えてしまう。
なので、しましまの由来となった縞模様は、その内綺麗に消えてしまう事をヴィーヴルとサーシャはこの時はまだ知らない。
森の家に着いた2人は、これまた昨日と同じ様にそっと家の中を覗き込む。
しましまは寝ている様だった。
「ねているのかな?」
「そのようなのじゃ」
2人はそっと家の中に入り柵の前へと近づいた。
そして、ヴィーヴルは昨日と同じ世話を始めるために、柵の上部の土魔法で作った覆いを消した。
器の水の量の確認。
食べ物の補充。
一通りの世話をした後、2人は昨日と同じようにしましまの背中を撫でた。
違うのは、昨日は怯えている状態だったところを恐る恐る撫でていたが、今日は起こさないように優しく撫でた。




