18 かいほう(1)
「イノシシの子供の様子を見に行くのじゃ」
縄の準備を終えたヴィーヴルは、サーシャに次の行動を提案した。
「そうだね、げんきになっているといいね」
「そうであれば嬉しいのじゃ」
ヴィーヴルはサーシャの手を取り、森の家の前まで瞬間移動で移動した。
家の中からは、微かにだが何者かが動いている気配がした。
「そっと、覗いてみるのじゃ」
ヴィーヴルの言葉に、サーシャは何も言わずに頷く。
そして、2人で家と外を隔てるものを静かに横へずらして中を覗く。
柵に入れられたイノシシの子供は、水を飲んでいる様だった。
「やった、おみずをのんでるよ」
「大丈夫のようなのじゃ」
2人は家の中へと入って行った。
柵の中にいたイノシシの子供は、驚いたのか水を飲むのを止めて柵の端へと移動した。
「驚かせてしまった様なのじゃ」
「びっくりさせてごめんね」
2人はイノシシの子供に謝ったが、イノシシの子供にその謝罪は届いていないのだろう、未だに端の方から動かない。
「まぁ、良いのじゃ」
ヴィーヴルは土魔法で作った器の中を確認する為に、柵の上部を覆っていた土魔法を消した。
器の中はかなり減っており、底の方に少し残されているだけだった。
「水を追加するのじゃ」
水魔法を発動させ、器の中を満たした。
次は食べ物の確認だ。
こちらは、昨日置いたものが殆どなくなっていた。
「こ奴は、何でも食べるようなのじゃ。
多分、食べられるところを全て食べたようなのじゃ」
「ほんとだね。
ひょっとしたら、たりなかったのかな?」
「そうかも知れんのじゃ。
今日は少し多めに置いておくのじゃ」
2人はイノシシの子供の食べ残しを取り出して外へと捨て、ヴィーヴルがストレージから取り出した新しい食べ物を柵の中へと置いた。
「このまま、げんきになるといいね」
「折角、助けたのじゃ。
元気になって貰わないと困るのじゃ」
柵の上からイノシシの子供を撫でていた。
イノシシの子供は、大人しく2人に撫でられていたが、逃げ場が無くなっていただけかも知れない。
相変わらず端の方で小さくなっていた。
「そうだ、ヴィーヴルちゃん。
なまえをつけない?」
「名前なのじゃ? サーシャはこ奴を飼うつもりなのじゃ?」
「そうしたいけど、ダメかな?」
「……止めた方が良いのじゃ。
こ奴にはこ奴の生き方があるのじゃ。
治ったら、こ奴らの世界に戻った方が良いのじゃ。
何時までも狭い所に閉じ込めておく事も出来んのじゃ」
「そうなのかな?」
「妾は返す方が良いと思うのじゃ。
サーシャもどうすれば良いのか、じっくりと考えてみるのじゃ」
「うん、わかった。
きめるまで、なまえもおあずけだね」
ヴィーヴルは無言で頷くと、柵の上に土魔法で覆いを作った。
「こ奴はまだ怯えておるようなのじゃ。
妾達は他に行った方が良いのじゃ」
「わかった~」
ヴィーヴルとサーシャは、歩いてサーシャの家へと向かった。
そして2人はサーシャの父親が帰ってくるまで絵本を読んで過ごした。




