13 魔道具を渡す
今日は少しだけ寝過ごしてしまった。
それが、昨晩に新しい魔道具が完成したことからの安堵からのものなのか、単純に寝床にもぐりこんだのが少し遅かったからなのかは分からない。
ともかく、今日はサーシャのモーニングコールにより目を覚ました。
寝床から飛び起き、慌ててサーシャの元へと向かう。
「ヴィーヴルちゃん、おはよ~」
「サーシャちゃん、お早うなのじゃ。
遅れてしまって済まんのじゃ」
「だいじょうぶだよ~。
それで、なにしてあそぶ?」
「遊ぶ前に、渡したいものがあるのじゃ。
この前、綺麗な石を魔道具にするって言ったのじゃ」
「うん、いってたね」
「その魔道具が完成したのじゃ」
「わぁ、ほんと? みせて、みせて~」
「慌ててはいかんのじゃ。
ちょっと待つのじゃ……」
ヴィーヴルは、腰に付けたストレージを覗いた。
ストレージの中には色々なものが入っていたが、お目当ての魔道具は見当たらない。
(あれ? 何処なのじゃ?)
ヴィーヴルは、両手で服を上から押さえつけて、何か物が入っていないかを確認していた。
「ヴィーヴルちゃん?」
「ちょっと待つのじゃ……」
昨晩からの行動を思い返す。
(昨日の夜には確かに2つ、魔道具を作ったのじゃ。
そして、それをストレージに……入れていないのじゃ。
その場に置いたままなのじゃ)
「サーシャちゃん、持ってくるのを忘れたから、取ってくるのじゃ」
「わかった~、きをつけてね~」
瞬間移動で移動するだけなのだから、気を付けるも何もないのだが、お決まりの文句だから仕方がない。
ヴィーヴルはすぐさま瞬間移動で洞窟まで移動し、魔道具を探し始めた。
尤も、昨晩作業した場所にある事は間違いがないので、すぐに見つけることが出来た。
2つの魔道具を両手に持ち、そのままサーシャの家の前へと瞬間移動する。
「おかえり~」
サーシャはその場に留まり、ヴィーヴルを迎え入れた。
「戻ったのじゃ。
はい、サーシャちゃん、これが新しく作った魔道具なのじゃ」
ヴィーヴルはサーシャが作った箱の魔道具を渡す。
「ありがと~、ヴィーヴルちゃん。
これは、どんなまどうぐなの?」
「これは、今まで持っておった遠くに居ても話すことが出来る魔道具なのじゃ。
但し、今までと違うのは、魔力が尽きないのじゃ。
魔力が少なくなって良く聞こえないとかはないのじゃ」
「ほんと? じゃあ、ヴィーヴルちゃんとずっとお話できるの?」
今回、ヴィーヴルが作った魔道具は、永久に使えると言う物ではなかった。
血も鱗も少なからず劣化していくようで、ヴィーヴルはサーシャが生きている間位は持つだろうと予測していた。
その位であれば、サーシャに対しては『ずっと』と表現しても問題がないだろう。
「あぁ、そういう事じゃ」
「どんなふうになってるの?」
「壊さぬ限り、開かないようにしてあるのじゃ。
中の魔力を逃がさぬようにする為には、そうするしかなかったのじゃ」
「そうなんだ~、じゃあ、しかたないね~」
箱の中にはヴィーヴル自身の血や鱗が貼られている。
血は多少気持ち悪いだけで済むかもしれないが、鱗を見られてしまってはヴィーヴルが龍であることが分かってしまうかもしれない。
それならば、箱を開けられないようにするのが得策だろうと考えた結果だった。




