04 魔法教育(2)
ヴィーヴルは瞬間移動も覚えた。
『空間を持ってくる』と言うのが分かりにくかったので、最初は落ちている石を持ってくる様に教えた。
それは、『物体移動』という立派な魔法なのだが、それは直ぐに使えるようになった。
「今は見えているものを持って来たでしょう。
じゃあ、見えない物はどうやって持ってきたら良いと思う?」
「う~ん……分かんない……」
「見えないのなら、見えなくても分かる物を置いておけば良いの。
ヴィーヴルには何だか分かる?」
「見えなくても分かるもの?」
「魔力を置いておけば良いのよ。
ほら、こんな風に……」
目の前を指差したかと思えば、前方には魔力の塊が地面に刺さっていた。
「そして、こんな感じでその目印の場所を持ってくるの」
此方に移動してきたと思った空間は、次の一瞬には元通りに戻っていた。
「あれ? こっちに持って来た筈なのに戻っちゃってる?」
「そう、空間を持ってくると、次の瞬間には元の所に戻っちゃうの。
持ってきた空間の中にヴィーヴルが居たらどうなると思う?」
「どうって……私も一緒にあっちに行っちゃうの?」
「そうなの、これが瞬間移動の方法なの。
ほら、こんな風に……」
同じように目印が置いてある空間を引き寄せ、今度は自分もろともその空間で包み込ませた。
次の瞬間、雌の龍は目印のあった所へと移動していた。
「うわ~、すご~い」
「ヴィーヴル、貴女にも出来る筈よ。
やってごらんなさい」
「えっと、目印のある空間を引き寄せて……」
「その前に、何処に目印を置いたの?」
「あっ、忘れてた」
「お母さんの目印を使っても良いけど、自分の目印を付けた方が良いわよ。
同じ波長をもつ魔力の方が分かりやすいから」
「波長って何?」
「そうね……ヴィーヴル、私の指先に魔力に魔力が集まっているのが分かる?」
「うん、半分透けているけど見えるよ」
「それは、お母さんと波長が違うから薄らとしか見えないの。
慣れてくればもっと見えるようになるけど、自分の魔力の見え方には到底及ばない。
近くでこんな感じだから、遠くに目印があったら分からなくなっちゃうのよ。
試しに、ヴィーヴルが目印を作って、ここに置いてみなさい」
「どんな形が良いの?」
「どんな形でも良いわよ。
自分の好きな形で構わないわ」
「う~んと……じゃあ、これ」
そう言ってヴィーヴルが作り出した形は、水晶に似たような六角柱のものだった。
「前に洞窟の奥でみたのが、キラキラしていて綺麗だったの」
「じゃあ、瞬間移動してみましょう」
「うん、分かった」
暫しの沈黙の後、ヴィーヴルの身体は母親の隣に存在していた。
それは、あの水晶型の魔力の目印があった場所でもある。
「やった、出来た~」
ヴィーヴルは母親に抱き着く。
それを雌の龍は優しく受け止める。
「良く出来たわね。
今の感じなら、どれだけ距離が伸びても大丈夫そうね」
「うん」
「じゃあ、次は目印が見えていない状態でも、探し出せるようになりましょうか。
そうすれば、目印さえ置いておけば何処にだって行けるようになるわ」
「うん」
「その前に、今日はもう終わりましょう。
大丈夫、ヴィーヴルなら直ぐに出来るようになると思うから。
それより、きちんと休まないとダメよ」
「はぁ~い、お母さん」
ヴィーヴルはいつも通り、雌の龍の膝枕で寝息を立て始めた。
よく眠っている……
(この子に教えていられるのは、後どの位の時間があるのかしら……)
雌の龍も、静かに目を閉じた。




