32 魔道具を作る(2)
「おばちゃん、サーシャ、ひまだよ~」
「そうねぇ……ヴィーヴル、そのお母さんが渡した小石をサーシャちゃんに渡してあげて。
サーシャちゃん、それで魔法を使ってみてね」
「分かったのじゃ」
「わかった~」
ヴィーヴルは母より渡された小石をサーシャへと渡した。
そして、小石を覆う魔法の練習を続けた。
サーシャはヴィーヴルから受け取った小石を眺めていた。
「おばちゃん、どうやったらまほうをつかえるの?」
「魔法を使いたいって思うだけで良いのよ」
「そうなんだ~」
サーシャは小石を握りしめて、『魔法を使いたい』という念を籠めた。
すると、サーシャの目の前に火の玉が浮いていた。
「おばちゃん、ヴィーヴルちゃん、わたしにもまほうがつかえた」
「良かったのじゃ」
「良くできたわね」
「お母さん、魔道具から魔法を発動させるためには、念じれば良いのじゃ?」
「いいえ、そうではないわ。
この小石には発動のきっかけとして、『念じる事』にしただけなのよ。
発動のきっかけは何でもいいのよ。
例えば、『何かにぶつかったら発動する』とか、『ある言葉で発動する』とかね」
「成程なのじゃ」
「小石を覆っている魔法は、そのきっかけによって解除されるようにしておかないとダメよ。
だから、魔道具は1回だけの使い捨てが基本なのよ」
サーシャの作りだした火の玉は、暫くその場で燃えていたが徐々に小さくなり消えてしまった。
ヴィーヴルは、その様子を眺めながら考え込んでいる。
「どうしたの? ヴィーヴル?」
「お母さん、そのきっかけで再び魔道具を覆うようにすれば、籠めた魔力が無くなるまで何度も使える様にならないのじゃ?」
龍の雌は目を見開いた。
確かに魔道具とするものには複数の魔法を籠めることが出来る。
解除の魔法を籠められるのならば、再び魔道具を覆う魔法を籠めることも可能だろう。
龍族は自身の魔力は膨大に持っているのだから、魔道具に頼る必要は無い。
ヴィーヴルに教えたのも、知識として覚えておいて欲しいと思っただけだった。
「ちょっと待ってね」
龍の雌は足元に落ちていた小石を拾い上げ、火の玉の魔道具にした。
ただし、サーシャの手元にある魔道具とは違い、3つの魔法が籠められたものだ。
「サーシャちゃん、これを使ってみてもらえる? 魔法を使いたい時は『火の玉』って言ってね。
そして、消したい時には『消えて』と言ってちょうだい」
「わかった~」
サーシャは龍の雌から新しい小石を受け取ると、「ひのたま」と叫んだ。
サーシャの目の前には、再び火の玉が浮かんでいた。
一呼吸置いた後、続けて「きえて」と叫ぶと、火の玉は音もなく消えた。
「おもしろ~い」
サーシャは再び「ひのたま」と叫ぶと、目の前には火の玉が浮かび、「きえて」と言うと火の玉が消え……と何回か繰り返した後、「ひのたま」と言っても何も起こらなくなった。
「籠めた魔力が無くなったようね。
でも、使い捨てではない魔道具が出来たわ。
ヴィーヴル、良く思いついたわね」
ヴィーヴルは満面の笑みを浮かべていた。
龍の雌は、そんなヴィーヴルの頭を優しく撫でていた。




