03 魔法教育(1)
『お母さん、出来たよ』
我が子自慢をするわけではないが、ヴィーヴルは物覚えが良いようだ。
先ほど教えた魔法を、2~3度練習しただけでもう覚えてしまった。
それならばと言う事で新しい魔法を教えると、砂が水を吸収するかのように覚えてしまう。
いくら龍族は魔法に適性があるとはいえ、ここまでの子は居なかっただろう。
「良く出来たわね。
今回はこれくらいにして、ゆっくりお休みなさい」
『はぁ~い、お母さん』
龍の姿のままのヴィーヴルが、隣へと近づいてきて横になった。
『ねぇ、どうしてお母さんは、私と違う姿で過ごしているの?』
雌の龍は本来の龍の姿形をしておらず、人型になっている。
ただ、頭にある2本の角が龍である名残を残しているだけだった。
「私はね、人間にこの姿で居るように呪いを掛けられたの。
元の姿ではあまり生活できないのよ」
正確には魔道具により、龍の姿になるとその魔道具に魔力を吸収され続けてしまう。
その魔道具が心臓に埋め込まれているから、取り出すことはできない。
人間にとっての脅威、その体躯の大きさを封じ込めるために考え出された方法だ。
「全く……それ程の脅威となる存在だという事は分かっているが、人間は次々と我々を封じ込める手段を考え付くものだな」
雄の龍が、以前に愚痴っていた。
「あなたには、その呪いが掛けられる前に此処へと連れてきたから、その姿でも大丈夫なのよ」
『そうなんだ。
でも、お母さんと同じ姿になってみたいな』
人化というか、変化の魔法を覚えておいても損は無いだろう。
「分かったわ。
じゃあ、次は変化の魔法を覚えましょうか」
『やったぁ~~~』
変化の魔法も教えたらやはり直ぐに覚えた。
そして、ヴィーヴルはそのまま人型で居ることが多くなった。
出来る限り母親と同じ格好で居たいと、心のどこかで思っていたのかも知れない。
そうして魔法を覚えながらの生活は続いていた。
龍族は、食べ物を食べなくても生きていけることが出来る。
空気中に存在する魔素と呼ばれるもの成分があれば、何も問題はない。
故に龍の母子は、此処に来てから洞窟に隠れ住んでいた。
他種族と関りを待たずとも生きていけるからだ。
大気中に存在している魔素は、体内で魔力へと変換される。
その魔素から魔力への変換効率は龍族が圧倒的に良かったので、龍族が魔法行使に長けていたのは、そのことが起因するとの研究が為された。
「変化の魔法の次は……そうね、瞬間移動の魔法を覚えましょうか? これはちょっと難しいわよ」
「すぐに覚える様に頑張るもん」
変化の魔法をマスターして、雌の龍の子供時代か? と見間違う様な面影がある、頭に角が2本ある少女が答えた。




