21 2度目の引っ越し
「ヴィーヴル、目印を此処に置いておきなさい。
そうしないと、此処へ遊びに来られなくなるわよ」
「分かったのじゃ」
ヴィーヴルは、瞬間移動の目印となる六角柱のようなものをこの場所へ設置した。
「さぁ、手をしっかり握っていてね。
サーシャちゃん、怖いようなら目を瞑っていても良いわよ」
「だいじょうぶだよ~」
龍の雌は、ヴィーヴルとサーシャの手をしっかりと握りしめた。
3人の景色は一瞬の後、昨日、龍の雌が目を付けていた洞窟の前へと切り替わった。
「はい、もう良いわよ」
「ここが、ヴィーヴルちゃんとおばちゃんの、あたらしいおうちなの?」
「そうよ」
「そっか~、はいっていい?」
「良いわよ」
龍の雌は、入り口に張っておいた結界を解いた。
「ヴィーヴルちゃん、いこ~」
「分かったのじゃ」
「あ、ちょっと待ってね。
ヴィーヴル、此処からさっき置いてきた目印の場所は分かる?」
「少し待つのじゃ……」
ヴィーヴルは先ほど設置してきた瞬間移動の目印を探し始めた。
だが、自分がどちらの方向から連れてこられたのか全く分からない。
洞窟の入り口を背にし、前面方向へ探してみた。
「お母さん、分からないのじゃ……」
ヴィーヴルは俯いた。
「ヴィーヴル、あちらの方向よ。
もう一度、やってごらんなさい」
ヴィーヴルは顔を上げて、雌の龍が指した方向へ集中して目印を探した。
今度は、その方向に反応を見つけることが出来た。
「お母さん、見つけたのじゃ」
「良くできたわね。
じゃあ、次にそこまで瞬間移動できるかしら?」
「やってみるのじゃ」
早速、瞬間移動を発動させようとしたヴィーヴルを龍の雌が止める。
「その前に、此処にも目印を置いて行ってね。
こちらに来られなくなってしまうわよ」
「そうだったのじゃ」
ヴィーヴルは、慌ててこちらにも目印を設置した。
「では、行ってくるのじゃ」
「ヴィーヴルちゃん、まって。
どこにいくの?」
「瞬間移動で、元の家に行ってくるのじゃ。
行ったら、直ぐに戻ってくるのじゃ」
「わたしもつれてって」
サーシャはヴィーヴルの手を握った。
「お母さん、良いのじゃ?」
「良いわよ、いってらっしゃい」
「じゃあ、行くのじゃ」
ヴィーヴルは目を閉じて、瞬間移動を発動させた。
暫くして、ヴィーヴルとサーシャは絵本を抱えて帰って来た。
「ただいまなのじゃ」
「ただいま~」
「お帰りなさい。
絵本を抱えてきたってことは、無事に瞬間移動が出来た様ね」
龍の雌はヴィーヴルの頭を撫でた。
ヴィーヴルは満面の笑みを浮かべ、撫でられるままになっていた。
「ヴィーヴルちゃん、なかでえほんをよも~」
「分かったのじゃ」
「その前に、お掃除のお手伝いをしてもらえるかな?」
「わかった~、おてつだいする~」
「妾もなのじゃ」
「じゃあ、どっちがおてつだいできるかきょうそうね」
「負けないのじゃ」
「なにをすればいいの?」
「早く教えて欲しいのじゃ」
「それじゃあね……」
3人は手を繋いで洞窟の中へ入り、掃除を始めた。




