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ある龍の物語  作者: まっこ
第1章 誕生
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02 誕生、そして別れ

 次の日の朝、卵の殻にひびが入っていた。

 ほんの少しの小さな穴と共にだが自然に出来たひびではなく、故意的に作られた小さな穴とひびだ。


「いよいよね……」


「あぁ、そうだな」


 人型に変化している2頭の龍は、顔を突き合わせてお互いの顔と卵を交互に見ていた。

 暫くすると、内側から卵を突く音と共に、ひび割れが大きくなっていく。


 顔が見えた所で、卵が転がり中から雛が這い出てきた。


「良し、その雛は此方へと渡して貰おう。

 抵抗しなければ悪いようにはしない」


 雛を強奪しようとしている時点で悪い事のはずなのだが、その様な考えには至っていないのか、さも当然の様に言い放つ。


「彼方の方向へ進んだ先に、山に空けられた洞窟がある。

 そこでヴィーヴルをしっかり守ってやってくれ」


「あなたは?」


「ここで奴らを食い止める。

 後から追いかけるから、先に行ってくれ」


 雄の龍ははにかんだ様な微笑みを浮かべると、龍の姿へと変化した。

 いや、元の龍の姿へと戻った。


『ここから先には通さん』


 龍の姿となったことで、巣としていた人間用の家は崩壊した。

 同時に雌の龍は我が子を抱えた。


 雄の龍は軽く頭を上げて、雌の龍の前方をブレスで焼き払う。

 と同時に、展開されていた結界にも穴を穿った。


『そこから逃げるんだ』


 雌の龍は我が子を抱えたまま、結界に出来た穴へと駆けこむ。

 そして、結界を抜けると龍の姿になり、雄に指示された方向へと飛び去って行った。


『時間を稼がないとな』


 周りでは龍を押さえ込もうと、兵士が剣を突き立てていた。

 普通の武器ならば龍に対して効果は無いだろうが、龍のものを加工して作られた武器では普通に硬い筈の龍の鱗さえも突き通す。

 元々は自分のものなのに、自分を傷つける為に使われるとは何とも皮肉な話だ。


 次々と兵士が集まってくる。

 今の所は追手が行かない様に、雌の逃げた方向を背に守っているが、兵士の数が多すぎる。

 次から次へと向かってくる兵士のために、身体の方はもう限界だった。


『頃合いか』


 そう呟いた龍の身体が、上を向いた。


「ブレスが来るぞ、気を付けろ」


 兵士たちは盾を構えて、ブレスに対抗する構えを取った。

 しかし、何も起きない。


「どうやら不発だったようだな」


 兵士達が剣を持ち直し、一斉に龍の下へと殺到した。


『道連れだ』


 一瞬暗くなったかと思うと、頭上には街を覆いつくすほどの大きな岩の塊があった。

 次の瞬間には、山かと見間違うほどの岩が、そこにあるだけだった。


 同時に、雄に言われた場所を目指して我が子を手に飛んでいた雌の龍は、雄の生体反応が無くなったことを感知した。


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