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ある龍の物語  作者: まっこ
第1章 誕生
16/344

16 帰還

「今日は、森の中で食べられるものを探してみましょうか。

 森の中には動物や魔物がいるかも知れないから、私の傍から離れないでね」


「わかった~」

「分かったのじゃ」


 龍の雌は、右手にヴィーヴル、左手にサーシャを連れて森の中を歩いて行く。

 勿論、動物や魔物が寄り付かぬように、逃げるほどの魔力を放出しながら……


「あそこに、キイチゴがあるわ。

 食べて来ても良いわよ」


「ヴィーヴルちゃん、いこっ」


「サーシャちゃん、待つのじゃ~」


「キイチゴには周りに棘があるから、気を付けてね」


「わかった~」

「分かったのじゃ」


 キイチゴの棘ぐらいでは、ヴィーヴルは痛みを感じることは無いであろうが、サーシャに棘が刺さってしまえば、痛みを感じるだろう。

 先ほどの注意は主にサーシャに対してだが、サーシャだけを特定して注意する必要も無い。

 ヴィーヴルだって、気を付けた方が良いのは間違いないのだから。


「いたっ」


「大丈夫なのじゃ?」


「うん、だいじょうぶ~」


 案の定、サーシャはキイチゴの棘に触れてしまったようだ。

 そうした苦労の末、ヴィーヴルとサーシャはキイチゴを取り、口の中へと放り込んだ。


「おいし~」


「美味しいのじゃ」


「もっと食べよ~」


「そうするのじゃ」


「2人とも、全部食べてしまってはダメよ」


「どうして?」

「どうしてなのじゃ?」


「鳥や、他の動物たちが食べる分が無くなるからよ」


「そっか~、わかった~」

「分かったのじゃ」


 半分くらいのキイチゴを2人で食べた所で、他の食べ物を探しに森の中を徘徊した。

 キイチゴの木を見つけては、半分くらいを2人が食べて次に移動する……を続け、家へと帰って来た。


「じゃあ、つぎは、えほんをよも~」


「分かったのじゃ」


 ヴィーヴルとサーシャは、サーシャが家から持ってきた絵本を家の前の木に凭れ掛かり読み始めた。

 龍の雌はいつも通りに周囲の警戒をしながら、2人が絵本を読んでいる様子を眺めていた。


 その時、警戒範囲内に感じ慣れた生体反応を見つけた。


(あら? 帰って来たのかしら?)


「サーシャちゃん、お父さんが帰ってきたようよ」


「ほんと?」


「えぇ、もうすぐ着くと思うわ」


「どこからくるの?」


「あっちの方ね」


 龍の雌は狩人の家の真正面方向を指した。


「むかえにいってくる」


「森の中は危ないから、ここで大人しく待ちましょうね」


「は~い」


 サーシャは絵本を投げ出し、駆け出して行かんばかりの状態だったが、何とか思い留まった。


「ただいま」


 暫くして、龍の雌が指差した方向から狩人の男が現れた。


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