11 お姫様
サーシャとヴィーヴルが一緒にある国の王女が登場する絵本を読んでいた時に、サーシャがヴィーヴルの方を見ながら告げた。
「ヴィーヴルちゃんにも、おなじのがあるよね?」
「?」
「あたまにのっかっているもの」
「これのこと?」
ヴィーヴルは頭にある角を指さしながら答えた。
「うん、そう」
サーシャは、ヴィーヴルの角を絵本の中の王女が頭にしていたティアラを同一視したようだった。
「私のは生まれた時から生えているんだって、お母さんに聞いたわ」
「そうなんだ……じゃあ、ヴィーヴルちゃんはうまれたときから、おひめさまなのかな?」
「違うと思うけど、そうなのかな?」
「きっとそうだよ。
ヴィーヴルちゃんはおひめさまなんだよ」
「お姫様ならお城に住んでいると思うから、違うと思うよ」
「ちがってもいいの、ヴィーヴルちゃんはいまからおひめさまね」
「お姫様って言われても、どうすれば良いの?」
「そうね~、まずはきれいなふくをきて……」
「この服じゃダメ?」
「そのふくもかわいいからいいとおもう……あとは、なんだろ?」
サーシャは、自分が思う姫の姿をヴィーヴルに当てはめようと思い描いていた。
「そうだ、おひめさまはまわりのひとにいばっているから、そんなかんじにしないと」
「威張るの? あんまりやりたくない……」
「じゃあ、ことばだけまねてみる? えほんだとことばのさいごに『じゃ』ってつけているから、おなじようにすればいいんじゃないかな?」
「最後に『じゃ』を付けるの?」
「ほら、わすれている」
「え、もう始めるの……じゃ?」
「そうそう、そんなかんじ」
「話し辛いよ……」
「ほら、わすれてる」
「え~っと、話し辛い……のじゃ?」
「ヴィーヴルちゃん、うまい」
「これはいつまで続けるの……じゃ?」
「ヴィーヴルちゃんはおひめさまなんだから、ずっとよ」
「え~」
「そして、わたしはヴぃーヴるちゃんのおせわをするかかりなの。
ほら、えほんのなかにもおひめさまとずっといっしょにいるでしょ?」
サーシャは絵本の中の王女付きメイドを、これが自分だと言わんばかりに指さしていた。
「サーシャちゃんも、お姫様で良いと思うけど……」
「ほら、またわすれている。
それに、わたしはあたまにこれをまけば、えほんのなかといっしょになるでしょ?」
サーシャはポケットから布を取り出し、頭へと巻いた。
「これで、えほんといっしょだよ」
「サーシャちゃんが良いなら良いけど……」
「ほら、また」
「えっと、良いけど……なのじゃ?」
「いいのじゃ……かな?」
「難しい……のじゃ?」
「そうそう」
その後ヴィーヴルとサーシャは、絵本をそっちのけでサーシャによるヴィーヴルの言葉尻に『じゃ』が付いている確認と付け方の特訓が行われた……のじゃ?




